プレスリリース
(研究成果) 切り花の日持ちが優れるダリアエターニティシリーズの新品種「エターニティムーン」、「エターニティサンセット」

- ダリアで本邦初。日経過による色の変化も楽しめる! 種苗生産のための原種苗提供予約を開始 -

情報公開日:2024年3月 6日 (水曜日)

ポイント

  • 農研機構は、優れた日持ち性とその美しさにより全国への普及が進んでいる良日持ち性ダリアエターニティシリーズに、シリーズ初の白色の「エターニティムーン」とダリアで初の花色の変化が楽しめる「エターニティサンセット」を追加し、バリエーションを拡大しました。このたび、この2つの新品種の種苗生産のための原種苗予約を開始しました。
  • 特徴である優れた日持ち性を活かし、新品種の全国への普及が期待されます。

概要

日持ちは消費者が花を選ぶ際のポイントの一つで、花きにおける最も重要な育種目標の一つです。ダリア(Dahlia variabilis)は、豪華な巨大輪から清楚な小輪まで大きさや花型のバリエーションに富み、多彩な花色を有することから、人気の切り花として消費量が増加しています。一方でダリアには日持ちが短いという欠点があり、消費のさらなる拡大には日持ち性の改良が強く望まれています。農研機構では、2014年からダリアの日持ち性を向上させる育種研究に取り組んできました。2020年に育成した良日持ち性ダリアエターニティシリーズ3品種(「エターニティトーチ」、「エターニティロマンス」、「エターニティルージュ」)は、優れた日持ち性とその美しさから、生産者や小売業者等の実需者からの評価が高く、全国に普及拡大が進んでいます。また、2023年には複色花色の「エターニティピーチ」、輸送後の日持ち性にも優れる「エターニティシャイン」も育成しました。このたび、そのエターニティシリーズに、良日持ち性でかつシリーズ初の白色花色の「エターニティムーン」(図1)、良日持ち性でかつ花色が観賞中に明赤色からアプリコット色に変化する「エターニティサンセット」の2品種を育成し(図2)、後述の通り、種苗生産のための原種苗提供の予約を開始しました。

新品種の追加により、ダリアエターニティシリーズの一層の全国普及が期待されます。

図1 「エターニティムーン」
図2 「エターニティサンセット」

予約期間 :
2024年3月6日から2024年3月29日まで
原種苗配布 :
2024年10月予定(有償配布になります)
申し込み先 :
農研機構野菜花き研究部門 研究推進室 渉外チーム
e-mail yoyaku-daria@ml.affrc.go.jp
FAX 029-838-6673

留意事項 : 原種苗提供時に、2つの契約を締結します。

  • 利用許諾契約 : 農研機構と利用許諾団体間の契約
    なお、利用許諾は、種苗の生産・販売を行う業者、地方公共団体、農林漁業者の組織する団体(農業協同組合等)等と締結します。生産者個人とは締結できません。
  • 原種苗提供契約 : 農研機構野菜花き研究部門と利用許諾団体間の契約
    利用許諾について、詳しくは、農研機構ホームページ「品種の利用方法」のページ(https://www.naro.go.jp/collab/breed/breed_exploit/index.html)をご覧下さい。

関連情報

予算 : 農林水産省委託プロジェクト研究「国産花きの国際競争力強化のための技術開発」(課題番号15653424; 2015~2019年)、農林水産省農産局「ジャパンフラワー強化プロジェクト推進」(2021年、2022年、2023年)
「エターニティムーン」品種登録出願番号 : 「第36948号」(2023年7月6日出願、2023年10月30日出願公表)
「エターニティサンセット」品種登録出願番号 : 「第36949号」(2023年7月6日出願、2023年10月30日出願公表)

問い合わせ先
研究推進責任者 :
農研機構 野菜花き研究部門 所長松元 哲
研究担当者 :
同 野菜花き品種育成研究領域 グループ長補佐
小野崎 隆
広報担当者 :
同 研究推進室仁木 智哉


詳細情報

開発の社会的背景

ダリアは、全国的に生産・消費が拡大している花きです。東京都中央卸売市場におけるダリア切り花の取扱金額は、2009年から2019年までの10年間で1.8倍に増加しています。(株)大田花き花の生活研究所によると、2020年のダリアの生産額は28.2億円と推定されており、切り花の重要品目としての成長が期待されています。しかしながら、ダリアには、他の花と比較すると切り花の日持ち性に劣るという大きな欠点があり、そのため、家庭での観賞、日持ち保証販売、切り花輸出の用途には不向きとされてきました。

ダリアの需要は、新型コロナウイルス感染拡大前には結婚式等のイベントなど業務用需要が主でしたが、ここ数年、小売店での取扱いが増加し、家庭用需要が増えています。切り花の家庭用需要の拡大にともない、日持ち性に優れた品種が望まれており、ダリアを業務用だけでなく家庭での観賞向けの切り花として定着させるためには、日持ち性を重視した品種の開発を進める必要があります。

研究の経緯

農研機構では、2014年からダリアの日持ち性を向上させる育種研究に取り組み、2020年に日持ち性に優れるダリア3品種、暗赤色の「エターニティトーチ」、濃桃色の「エターニティロマンス」、深赤色の「エターニティルージュ」を育成しました(図3)。これらの品種は2023年から花き市場への本格出荷が始まっていますが、特に、ダリアという品目を好んで仕入れされる小売店主や業者での評価が上昇し、消費者の人気も高まっています。日本最大の花き市場である(株)大田花きの品種別入荷量データによると、2023年4~12月の全ダリア入荷量は約129万本でしたが、「エターニティルージュ」が約1万9200本(品種別シェア16位)、「エターニティロマンス」が約1万8300本(同17位)と、本格普及1年目から全国への普及拡大が進んでいます。2023年には桃色に中心白色で複色花色の「エターニティピーチ」、濃桃色で落弁しにくく輸送後の日持ち性にも優れる「エターニティシャイン」の2品種を育成し(図3)、2024年夏から普及を開始する予定です。農研機構では、さらなる日持ち性の向上とともに、花色についても、ダリアの使用用途拡大に向けて、慶弔のセレモニーで利用可能な白色や、花色が変化するなどのこれまでのダリアにはない特性を有する品種について、育成を進めてきました。

新品種「エターニティムーン」、「エターニティサンセット」の特徴

  • 「エターニティムーン」(図4)の日持ち日数は、白色の一般品種(図5)と比べると1.4~2.0倍です(表1)。「エターニティムーン」の花は、咲き始めはクリーム白色ですが、生けて数日経過すると純白に近づきます(図6)。露心1)が発生しにくく、良日持ち・白色の特性を活かして、ダリアの葬儀用などへの販路拡大が期待されます。
  • 「エターニティサンセット」(図78)の日持ち日数は、一般品種(図5)と比べると1.6~2.8倍です(表1)。夏季高温期(7~8月)採花の抗菌剤液2)や、高温下(28°C・GLA液3))での日持ち日数が、それぞれ、一般品種の2.8倍、1.6~1.9倍と、高温下の日持ち性に優れますので、地球温暖化への適応に対応し、切り花の廃棄ロス削減につながることから、農林水産省が策定した「みどりの食料システム戦略」や、農研機構の第5期組織目標の「生産性の向上と環境保全の両立」にも貢献する育種成果です。
  • 両品種の花の直径は約10~13cmであり(図478)、ホームユース向けにも使いやすい中輪品種です。
  • 「エターニティサンセット」(図78)は、咲き始めは明赤色ですが(図7)、数日後には内花弁が淡色化してグラデーションを生じたり、アプリコット色に変化する(図8)など、花色の変化が楽しめます(図9)。ダリアで観賞期間中の花色変化を特徴とした品種はなく、本邦初の色変わりする良日持ち性ダリア品種です。

    (関連動画)切り花の日持ちが優れるダリアエターニティシリーズの新品種「エターニティサンセット」の花色の変化

    https://youtu.be/4A1pZVslqks

品種の名前の由来

日持ちが優れる品種という特徴から、英語で「永遠」を意味する「エターニティ(eternity)」を冠したエターニティシリーズとして命名しました。「エターニティムーン」は月のようなクリーム白色の花色であることから、「エターニティサンセット」は夕日のように明赤色からアプリコット色へと色変わりする花色を有することから、それぞれ命名しました。

今後の予定・期待

2020年に育成した「エターニティトーチ」、「エターニティロマンス」、「エターニティルージュ」(図3)は、2023年から民間種苗会社2社により営利生産用のセル成型苗の本格販売が開始され、全国各地で切り花が生産・出荷されています。優れた日持ち性とその美しさで、生産者、市場関係者、小売店等の実需者からの評価が上昇し、普及拡大が進んでいます。2024年夏からは、「エターニティピーチ」、「エターニティシャイン」(図3)のセル成型苗の販売が開始される見込みです。

今回追加された「エターニティムーン」(図4)、「エターニティサンセット」(図78)についても、2025年春以降に苗販売が開始される見込みで、2025年夏には一般の生花店の店頭に並ぶ予定です。これまでに開発した良日持ち性ダリアエターニティシリーズ7品種の普及を通じて、ダリア切り花全体の消費拡大、ニーズ向上が期待されます。

農研機構では、さらに日持ち性の向上した超長命性品種の育成や、花色・花型等のバリエーション拡大を目指した育種研究を進めています。

日本産の高品質な切り花は、海外でも高い関心が持たれています。ダリア切り花についても、今後の攻めの農林水産業を実現するための有望な輸出切り花品目になることが期待できます。エターニティシリーズに適応した輸出対応技術の開発にも将来取り組みたいと考えています。

原種苗入手先に関するお問い合わせ

原種苗については、概要にも記載したように、以下の連絡先にお問い合わせください。

農研機構野菜花き研究部門 研究推進室 渉外チーム
e-mail yoyaku-daria@ml.affrc.go.jp
FAX 029-838-6673

利用許諾契約に関するお問い合わせ

下記のメールフォームでお問い合わせください。

農研機構HP【品種についてのお問い合わせ】
https://prd.form.naro.go.jp/form/pub/naro01/hinshu

なお、品種の利用については以下もご参照ください。

農研機構HP【品種の利用方法】
https://www.naro.go.jp/collab/breed/breed_exploit/index.html

用語の解説

露心
ダリアの花には、花弁が筒状になった中心部の管状花と、下部が筒状で上部が平らで舌状に伸びている舌状花の2種類の小花があります。ダリア八重咲き品種は、ほぼ舌状花から構成されますが、秋が深まり日長が短くなると、舌状花の割合が減少し、開花直後から中心部の管状花がむき出しになる露心が発生します。露心したダリア切り花は低品質と評価されるので、品種選定では露心しにくいことが重視されます。[新品種「エターニティムーン」、「エターニティサンセット」の特徴へ戻る]
抗菌剤・ケーソンCG
切り花の品質を保持するために使用するイソチアゾリン系抗菌剤です。導管内での細菌の増殖を抑え、水あげ悪化を抑える効果があります。なお、ケーソンCG(ダウ・ケミカル日本(株))原液には、抗菌作用のある有効成分として11.3 g・L-1の5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(CMIT)と3.9 g・L-1の2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(MIT)が含まれています。[新品種「エターニティムーン」、「エターニティサンセット」の特徴へ戻る]
GLA液
1%グルコース+ケーソンCG2)0.5 mL・L-1+硫酸アルミニウム50mg・L-1から構成される品質保持剤(切り花の品質を保持するために使用される薬剤)です。[新品種「エターニティムーン」、「エターニティサンセット」の特徴へ戻る]

参考図

図3 エターニティシリーズの先行5品種
「エターニティトーチ」(上段左)、「エターニティルージュ」(上段右)、
「エターニティシャイン」(中段左)、「エターニティロマンス」(中段右)、
「エターニティピーチ」(下段)
図4 「エターニティムーン」の切り花
図5 白色の一般品種のGLA液における日持ち性
(23°C、相対湿度70%、12時間日長、撮影日: 2023.6.12~6.18)
ダリア一般品種の日持ち日数は、5~6日程度と短い。
図6 「エターニティムーン」のGLA液における日持ち性と花色の経時変化
(23°C、相対湿度70%、12時間日長、撮影日: 2023.3.13~3.27)
図7 「エターニティサンセット」の切り花(咲き始め)
図8 採花から5日後の「エターニティサンセット」の切り花
高知県の生産地で12月4日採花。
農研機構(茨城県つくば市)に12月6日に到着後、3日目に撮影。
花色がアプリコット色に変化。
図9 「エターニティサンセット」のGLA液における日持ち性と花色の経時変化
(23°C、相対湿度70%、12時間日長、撮影日: 2023.2.24~3.10)
明赤色からアプリコット色へ花色が変化する。