プレスリリース
(お知らせ) 「NARO生育・収量予測ツール②イチゴ」の対応品種を10品種に拡大で品種特性に応じた生産性向上を実現

情報公開日:2025年12月12日 (金曜日)

ポイント

農研機構は、イチゴの収量を品種ごとに予測するAPI「NARO生育・収量予測ツール②イチゴ」で利用できる品種を拡大し、種子繁殖型品種「よつぼし」、「ベリーポップ はるひ」、四季成り性品種「夏のしずく」、一季成り性品種「恋みのり」、「いばらキッス」、「越後姫」、「かおり野」、「紅ほっぺ」など10品種で利用できるようになりました。これにより、品種ごとの特性に応じた収量予測と栽培改善が実現できるようになりました。

概要

農研機構は、農業データ連携基盤(WAGRI)1)を介して利用可能なAPI2)「NARO生育・収量予測ツール」を開発し、施設野菜では①果菜類(トマト、キュウリ、パプリカ)、②イチゴとして品目ごとの収量予測APIを提供しています。イチゴの収量を品種ごとに予測するAPI「NARO生育・収量予測ツール②イチゴ」は、気温や日射量などの環境情報、定植日などの基本的な栽培情報、植物の葉面積や開花日の生育情報を入力すると、総乾物生産量や積算収量を計算し、出力するAPIです。計算された収量予測を栽培改善や作業計画に用いるなど、幅広い活用が期待されます(https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nivfs/160662.html)。

このたび、本ツールの対応品種に、農研機構育成品種「夏のしずく」、「恋みのり」など8品種を加え、計10品種に拡大しました。これにより、新たに約900ha(推定値)に相当する栽培面積への対応が可能になりました。全国的に栽培が可能な種子繁殖型品種、北海道や東北地方、本州の高冷地の夏秋どり栽培で用いられる四季成り性品種、主に本州、四国、九州の促成栽培で用いられる一季成り性品種について、それぞれ栽培地域に制限がない品種を中心に対応しているので、本ツールは全国各地域で利用可能です。中でも一季成り性品種は、公的試験研究機関(茨城県農業総合センター、新潟県農業総合研究所)の協力の下、特定の地域で栽培が可能な品種や、特定の地域での主力品種にも対応しました(表1)。

表1本ツールが新たに対応した品種名と各品種の適用可能な栽培様式

これにより、農業情報サービスを開発・提供するICTベンダー3)は、国内の様々な地域にサービスを提供できます。栽培地域限定の品種を導入することで、特定の地域に特化したサービス展開も可能になります。農研機構のホームページにICTベンダー向けの本ツール利用方法「NARO生育・収量予測ツール②イチゴ標準作業手順書」を掲載しています(https://sop.naro.go.jp/document/detail/174)。

今後は、イチゴ生産者の安定したイチゴ生産、収益向上につながるよう、本ツールを活用したサービスの開発・普及を支援していきます(図1)。

図1「NARO生育・収量予測ツール②イチゴ」の利用イメージ

用語の解説

農業データ連携基盤(WAGRI)
気象や農地、収量予測など農業に役立つデータやプログラムを提供する公的なクラウドサービス。農研機構および外部機関が開発した様々なWeb-APIを使用できます。 [概要へ戻る]
API
Application Programming Interfaceの略称。ソフトウェアやプログラム、あるいはWebサービスの間をつなぐ、インターフェースの仕様を指します。 [概要へ戻る]
ICTベンダー
「情報通信技術(ICT)」に関連する製品やサービスを提供する会社。施設園芸分野では、温室の環境制御システム、栽培データを管理・分析するクラウドサービス、遠隔操作が可能なモニタリング機器などを提供する企業が該当します。 [概要へ戻る]

関連情報

  • ●予算 : 運営費交付金、戦略的スマート農業技術等の開発・改良「いちごの輸出拡大を図るための大規模安定生産技術の開発」(JPJ011397)、戦略的スマート農業技術等の開発・改良「需要に基づいた計画的・効率的な生産・流通体系の構築と消費者への価値訴求プラットフォームの提供に関する開発」(JPJ011397)
  • ●特許 : 第7523841号「農業支援プログラム、農業支援方法及び農業支援装置」、第7773242号「パラメータ算出方法及び農業支援情報出力方法、並びにパラメータ算出プログラム及び農業支援情報出力プログラム」
  • ●論文 : Tomomi Sugiyama, Yusuke Kakei, Atsushi Oda, Yasunaga Iwasaki, Masahide Isozaki (2025) Simulation of strawberry yield using dry matter distribution based on the potential growth of the sink-source organs. Front. Plant Sci. 16.
    doi: 10.3389/fpls.2025.1544735
問い合わせ先
研究推進責任者 :
農研機構 野菜花き研究部門 所長東出 忠桐
研究担当者 :
同 施設生産システム研究領域 研究領域長礒﨑 真英
グループ長小田 篤
研究員杉山 智美
同 東北農業研究センター 主任研究員濱野 恵
茨城県農業総合センター 園芸研究所本間 貴司
新潟県農業総合研究所 園芸研究センター佐藤 翔一
広報担当者 :
農研機構 野菜花き研究部門 研究推進室仁木 智哉