プレスリリース
新潟県中越地震による農業用ダム・ため池の緊急現地調査について

- 地すべり被害を低減する農業用ため池 -

情報公開日:2004年11月 2日 (火曜日)

要約

独立行政法人農業工学研究所(理事長 佐藤 寛、茨城県つくば市)では、去る10月23日の新潟県中越地震の発生後、農林水産省農村振興局防災課の支援要請に応えるため、所内に震災対策支援本部を設置し、農業用ダム及びため池等の被災地にこれまで13名の職員を派遣してきました。そして、被災したダム及びため池等の二次災害を未然に防止するため、堤体の亀裂や沈下が堤体に及ぼす危険度について専門的な診断・調査を実施すると共に、落水による貯水池の水位低下、シートによる亀裂の被覆等、被災拡大を防止する応急措置について、県等の関係者に技術的な助言を行ってきています。

新潟県中越地震は、小千谷市、栃尾市、川口町等の中山間地域直下を震源としたことから土砂崩れ(地すべり)が多発し、数多くの道路が寸断されました。同時に、大量の土砂が河川を一時的にせき止めたため、このままでは雨水や沢水が徐々に溜まり、土石流発生による二次災害が懸念されています。

一方、この地域の農業用ため池は、中山間地域の水田の灌漑用水を補給するため、一般に沢沿いに建設され、土地改良区や農業者により管理されています。当所がこれまで行った現地調査の結果、これらのため池は土砂崩れによる大量の土砂を貯留し、下流域に流出することを防止する機能を発揮していることが明らかになりました。

例えば、栃尾市赤谷地区のびわ崎池付近でも、今回の地震等によってため池上流域で数多くの地すべりが発生しました(別紙)。そのため、本ため池下流にある民家10軒が緊急避難しましたが、本ため池が土砂流出を防いだことから、ため池下流の民家だけでなく、その下流域にある栃尾市街地も土石流による二次災害を免れることができました。

今後、被災したため池は、「ため池整備指針」に準じて補修・改修されることになりますが、今回の地震規模を踏まえると、ため池の耐震性と洪水の安全性をより一層向上させることが重要です。そのためには、「ジオグリットを使用した耐震性盛土工法」や「堤体越流型ため池」等、ダム及びため池の新たな改修工法を早急に開発する必要があると考えています。