ポイント
農研機構は、栽培環境を精密に制御し、作物の環境応答を精密に解析できる、ロボティクス人工気象室を構築しました。また、これをスーパーコンピューター「紫峰」と連動した研究基盤として、このたび運用を開始しました。作物の栽培環境データおよび画像等の形質データをAI解析1)することにより、任意の環境における作物の性能(収穫時期、収量、品質等)を精密に推定することが可能になります。また、民間企業等の外部機関からも遠隔利用が可能です。農研機構は、本研究基盤を活用した共同研究により新たな品種や栽培方法の開発を推進します。
概要
農研機構は、農研機構内のみならず民間企業、公設試験研究機関、大学、他法人等(以下、民間企業等)と連携し、気候変動によって生じる様々な環境に適応した作物生産技術の開発を目的とした研究を行っています。このたび、作物の栽培環境を精密に再現あるいは模擬できる人工気象室「栽培環境エミュレータ2)」に、大きさや色などの作物形質を連続で取得可能な「ロボット計測装置3)」を内蔵した「ロボティクス人工気象室」を開発し、それらをネットワークなどの情報インフラと一体化した研究基盤の運用を開始しました(写真)。本研究基盤により、任意の環境下における作物の性能(収穫時期、生育量、品質等)を精密に推定し、適切な栽培法や育種に関する情報を得ることが可能となります。
栽培環境エミュレータとロボット計測装置という2種の装置を組み合わせることで、人工気象室を開閉することなく、経時的に取得された画像およびセンシング情報を解析し、作物形質を連続的に計測することができます。作物が栽培環境に反応し形質を変化させる環境応答を解析することで、任意の環境における作物の性能(収穫時期、収量、品質等)を精密に推定し、適切な栽培方法や品種育成に関する情報を得ることが可能となります。
ロボティクス人工気象室とスーパーコンピューター「紫峰」 (https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/rcait/135385.html)がネットワーク接続により連動することで、作物環境応答データを利用した深層学習(AI解析)による解析だけでなく、「農研機構統合DB4)」に含まれるゲノム情報、成分等の様々な農業データを用いた統合的な解析が可能となります。また、情報セキュリティ対策を講じた安全性の高いアクセス環境を導入することにより、民間企業、大学、公設試験研究機関、JA、産地等の外部機関からもこれらの解析を遠隔で行うことができます。
本研究基盤は、気候変動対策といった課題解決に取り組むため、様々な環境条件下の作物を対象とした技術開発の加速化と解析環境の遠隔化を実現したシステムです。本研究基盤は、農研機構で最先端の研究を行うための基盤であると同時に、民間企業等の外部機関との共同研究のための基盤として利用できます。
本研究基盤利用に関するお問い合わせ先
連絡先 : 農研機構 基盤技術研究本部 研究推進室
e-mail :
関連情報
予算 : 内閣府官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)、農林水産省令和2年度補正予算「国際競争力強化技術開発プロジェクト」、令和3年度補正予算「農業・食品関係データの高度活用のためのネットワーク基盤構築工事」、運営費交付金
上級研究員伊藤 博紀
研究員内藤 裕貴