プレスリリース
簡便な空撮により圃場管理を効率化する簡易気球を開発

情報公開日:2008年7月 8日 (火曜日)

水田や畑全体を、ヒバリのように100m程度の高さで静止して見ることができれば、作物生育のムラ、雑草の生え具合、湿害の場所、土の湿り具合など、作物 栽培にとって有用な情報を得ることができます。そこで、簡単なヘリウム気球と小型デジタルカメラおよびラジコン装置を組み合わせて、安価な簡易空撮気球 「ひばりは見た!」を作製しました。これを使って、空撮を行ったところ、地上で見てもほとんどわからない、雑草生育の様子を明らかにすることができまし た。この装置は、研究関係者だけでなく、農家、普及指導関係者にとっても、栽培管理の効率化に役立つと期待されます。


詳細情報

背景とねらい

農業は一般に広い土地を使って行われますが、地上からその全体像を把握することはかなり困難です。もし、空撮による圃場の写真が簡単に得られれば、作物生育量のムラ、土壌状態などを把握でき、栽培管理の効率化に大きく貢献します。空撮は人工衛星、航空機、ラジコンの飛行機・ヘリコプター、気球(撮影会社)によって可能ですが、それらは1ha以下の圃場を手軽にかつ安価に調べるという目的にはかなっていません。そこで、身近な材料を使って、安価な簡易空撮気球を作製し、栽培管理や試験研究に役立てようとしました。

成果の内容・特徴

  • 作製した気球は、機体部とカメラ部からなっています。機体部は、大型ポリエチレン袋(1.9m×1.2m×0.05mm厚)にガス注入コック、つり下げ金具(ハトメ)、水平翼をつけ、袋の口を熱でシールし、ヘリウムガスを充填したもので、リールに巻いた投げ釣り用糸で係留します。大きさは1.5×0.9×0.6m、体積0.8立米で、最大積載重量は560gです。カメラ部は、小型デジタルカメラをゴンドラに入れ気球につり下げ、ラジコンにより、撮影方向を変えてシャッターを押すことができます(総重量260g)。気球は、高度150m程度まで上げることができ、撮影できる範囲は、28mm広角レンズで高度の1.27倍になります(横位置)。製作費用は、デジタルカメラを除くと約2.5万円です。なお、ラジコンを使わない場合は、係留索を上下に動かしてその振動でゴンドラを回転させる簡単な機構とカメラのインターバルシャッターを使って撮影します(図1、図2、図3)。
  • 本装置により撮影した、大豆栽培圃場の様子を示します。この圃場は100×42mの大きさで、地上からの撮影では、雑草分布の全体の様子がわかりません(図3)。しかし、空撮装置で上空37mから撮影すると、図5のように左半分の小麦を混作した区と右半分の大麦を混作した区の雑草の発生(うすい色の部分)の違いがよくわかります。違いを数値で表すことも可能で、図6のように画像解析ソフトで両区の雑草の面積比率(被度)を測定すると、左半分が7.4%、右半分が15.9%で右の方が2.1倍多いという結果が出ました。
  • このように、本空撮装置は、圃場全体を直感的に把握することを可能にし、また数値データを得られることもわかりました。この装置は、研究者だけでなく、農家、普及指導関係者にとっても有用であり、圃場管理の効率化や高精度化に利用できると期待されます。

図1.空撮気球の概念図

図2.空撮気球

図3.カメラ部

図4.大豆圃場の地上撮影画像

図5.大豆圃場の空撮画像

図6.画像解析ソフトによる雑草面積比率(被度)の測定