プレスリリース
不耕起栽培で飼料用トウモロコシの栽培を省力化

- 東北の黒ボク土地帯でも不耕起栽培で安定した収量が得られることを実証 -

情報公開日:2008年7月28日 (月曜日)

独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構(略称:農研機構)東北農業研究センターと岩手県農業研究センター畜産研究所は共同して、飼料用トウモ ロコシの栽培を省力化する技術の開発を行なっており、黒ボク土地帯では、不耕起栽培が耕起栽培と遜色のない安定した収量が得られる技術であることを実証しました。 不耕起栽培の基本技術はすでにアメリカで確立されており、我が国でも専用 播種機が市販され、除草剤が登録されるなど、普及に向けた条件が整ってきています。飼料作物の省力化栽培技術として期待されていますが、新しい技術であることから、収量性に関する生産者の不安があり、全国的にみても、不耕起栽培の導入は、これからというのが現状です。 今回、登録除草剤による雑草防除体系を確立し、不耕起栽培でも安定した収量が得られることが確認できたことによって、大規模経営に向けた低コスト、省力・省資源の有力な技術として不耕起栽培の有効性が実証されました。 なお、本研究は、農林水産省の委託プロジェクト研究「粗飼料多給による日本型家畜飼養技術の開発」で実施したものです。


詳細情報

トウモロコシは不耕起栽培でも耕起栽培と同等の収量性が得られる。

背景とねらい

サイレージ用トウモロコシの不耕起栽培はコントラクター(大規模な農業生産法人)等による大規模生産向けの省力化技術として期待されています。すでに専用 播種機が市販化され、導入に際して問題となる越年生・永年生雑草についても防除に有望な非選択性茎葉処理除草剤が2006年に登録されるなど、その普及に 向けた条件も整備されつつあります。しかし、国内での実際的な栽培事例がほとんどないため、収量性に対する生産者の不安があり、全国的にも不耕起栽培の導 入はこれからという現状にあります。そこで、実証栽培試験によって不耕起栽培の収量性を評価するとともに、国内への導入にあたっての基盤技術となる、登録 除草剤による雑草防除体系の確立を目指しました。

成果の内容・特徴

  • 東北農研センター内の黒ボク土圃場において、多様な品種、作期、肥培管理条件で実施した不耕起栽培試験におけるサイレージ用トウモロコシの乾物収量や雌穂重割合は、耕起栽培と同等です(図1)。東北地域内の標高30m(むつ市)~950m(岩泉町)の広範な気象条件下や異なる年次での実証栽培においても、収量性が低下することはありませんでした(図2)。
  • 4年間の連作試験でも、不耕起栽培の収量性に顕著な低下はみられません(図2)。
  • 耐倒伏性は不耕起栽培によりむしろ向上することがあります(図3)。
  • 播種前に非選択性茎葉処理剤を、播種直後に選択性土壌処理剤を施用すれば不耕起栽培時の雑草は効果的に防除できます。越年生雑草や永年生雑草が少なければ選択性土壌処理剤だけでも防除できますが、非選択性茎葉処理剤だけで雑草を防除することはできません(表1)。

図1 耕起栽培と不耕起栽培の収量性の対比

図1 耕起栽培と不耕起栽培の収量性の対比
(東北農研センター圃場において多様な品種、作期、肥培管理下で 実施した小規模圃場試験の結果を集約)

図2 現地実証試験における収量性

図2 現地実証試験における収量性 (実用機を用いた実規模生産圃場での栽培試験)
岩手県農業研究センター畜産研究所の調査結果

図3 実証圃(むつ市)における倒伏状況収穫時の密度は、耕起区5900本/10a、不耕起区6200本/10a

図3 実証圃(むつ市)における倒伏状況収穫時の密度は、耕起区5900本/10a、不耕起区6200本/10a

補足説明

不耕起栽培と耕起栽培の播種法の違い
耕起栽培 :プラウ→ロータリ耕起→播種→鎮圧→除草剤散布(土壌処理)
不耕起栽培:除草剤散布(非選択性茎葉処理)→播種→除草剤散布(土壌処理)

不耕起播種機の構造
不耕起播種機にはいくつかの型式がありますが、本研究で使用したものは下図のような型式の市販の機種です。

不耕起播種機の構造