プレスリリース
東北地域向けの観賞用水稲新品種、 赤穂の「奥羽観378号」、紫穂の「奥羽観379号」を開発

情報公開日:2008年9月18日 (木曜日)

農研機構 東北農業研究センターでは、東北地域で栽培が可能な新しい観賞用水稲品種として、赤穂の「奥羽観378号」、紫穂の「奥羽観379号」を育成しました。 「奥羽観378号」は穂に赤褐色の長い芒(ぼう)があり、穎花も赤色になるため、穂ぞろい期には穂全体が赤色に見えます。「奥羽観379号」は穂に紫色の 長い芒があり、穎花も紫色になるため、穂ぞろい期には穂全体が紫色に見えます。水田の新たな有効利用として、景観作物、切り花、ドライフラワー、ワラ細工 などに加工利用でき、地域の活性化につながることが期待されます。 本研究は、農林水産省プロジェクト研究「低コストで質の良い加工・業務用農産物の安定供給技術の開発」予算で実施されました。


詳細情報

背景とねらい

近年、水田の新たな有効利用の一つとして、稲を食用としてだけではなく景観作物として作付けする動きが見られます。東北農業研究センターでは、2005年に葉に白縞が入り、穂が紫色の観賞用品種「奥羽観383号」を育成しました。しかし、利用者からは切り花として販売したり、景観用として利用したりするには1品種だけでは不十分で、色や形が異なる複数の観賞用品種を利用したいという要望が高まっていました。そこで、東北地域向けの新たな赤穂と紫穂の観賞用品種を育成しました。

成果の内容・特徴

  • 「奥羽観378号」(図1)は、出穂期と成熟期が“早生の晩”で、穂が赤色の水稲ウルチ品種です。
  • 「奥羽観378号」の稈長は極短くて倒伏に強いため、一般品種と同様に機械化体系での栽培が可能です。穂には赤褐色の長い芒(ぼう)があり、穎花も赤色になるため、穂ぞろい期には穂全体が赤色に見えます(図2、表1)。葉は緑色で、赤穂とのコントラストが美しいです。成熟期には芒および籾の赤色があせてきます。玄米収量は一般品種に比べて劣ります(表1)。
  • 「奥羽観379号」(図3)は、出穂期と成熟期が“晩生の早”で、穂が紫色の水稲ウルチ品種です。
  • 「奥羽観379号」の稈長は短くて倒伏に強いため、一般品種と同様に機械化体系での栽培が可能です。穂には紫色の長い芒があり、穎花も紫色になるため、穂ぞろい期には穂全体が紫色に見えます(図4、表1)。葉は緑色で、紫穂とのコントラストが美しいです。成熟期には芒および籾の紫色はあせてきますが、紫色は残っていて十分観賞が可能です。玄米収量は一般品種に比べて劣ります(表1)。
  • 穂が退色せずに観賞が可能な期間は気象条件にもよりますが、「奥羽観378号」は出穂から出穂後20日程度で、「奥羽観379号」は出穂から出穂後40日程度です。
  • 赤穂の「奥羽観378号」、紫穂の「奥羽観379号」、白縞葉・紫穂の「奥羽観383号」を組み合わせることで、色や形のバリエーションが増え、利用価値が高まります。
  • いずれの品種も水田の景観作物、切り花、ドライフラワー、ワラ細工等に加工利用でき、地域の活性化につながることが期待されます。

図1.「奥羽観378号」の草姿(育成地、2007年8月14日)

図2.「奥羽観378号」の穂。

図3.「奥羽観379号」の草姿(育成地、2007年8月20日)

図4.「奥羽観379号」の穂

表1.「奥羽観378号」、「奥羽観379号」の稈長、芒の多少・長短、芒の色、精玄米収量

用語説明

芒:籾の先にある毛のこと。「のぎ」、「のげ」ともいう。

頴花:稲の穂に付く個々の花。成熟すると、籾殻になる。