プレスリリース
玄米が極めて小さい紫黒米新品種「奥羽紫糯389号」を開発

情報公開日:2008年9月18日 (木曜日)

農研機構 東北農業研究センターでは、極小粒の紫黒米モチ品種「奥羽紫糯389号」を育成しました。本品種は、玄米重が紫黒米モチ品種「朝紫」の約半分と極めて小さく、プチプチとした歯触りの特徴的な食感から赤飯などの調理飯の素材として注目されます。また、食物繊維、カルシウム等を多く含みますので、付加価値の高い多様な食品の素材として期待されます。東北地域中南部以南で生産が可能です。 本研究は、農林水産省プロジェクト研究「低コストで質の良い加工・業務用農産物の安定供給技術の開発」予算で実施されました。


詳細情報

背景とねらい

近年、食の健康志向や多様化を背景として、栄養成分を多く含む有色米品種が各地で栽培されるようになりました。その中で、紫黒米ではモチ品種の「朝紫」が玄米として販売され、菓子、日本酒、麺等の着色素材としても幅広く活用されています。また最近、極小粒ウルチ品種の「つぶゆき」が青森県で育成され、パラパラとした食感から新しい素材として活用されています。紫黒米モチ品種「朝紫」が極小粒になれば、食べやすい赤飯などのさらに新しい素材として、利用が期待できます。そこで、やわらかくプチプチとした食感で、栄養成分を多く含む極小粒の紫黒米モチ品種を育成しました。

成果の内容・特徴

  • 「奥羽紫糯389号」(図1)は、出穂期と成熟期が「朝紫」と同じ“早生の晩”に属する、極小粒の紫黒米モチ品種です。東北地域中南部以南で生産が可能です。
  • 稈長は短くて倒伏に強く、脱粒しにくいため、一般品種と同様に機械化体系での栽培が可能です。生育期間を通じて葉の縁が紫色で、ふ先(籾の先)色も紫色のため、一般品種と識別することができます(表1)。
  • 粗玄米収量は「朝紫」の7割と低収ですが、極小粒の「つぶゆき」とは同程度です。玄米の粒長および粒幅が短く、玄米千粒重が「朝紫」の約5割、「つぶゆき」の約7割と極めて小さいことが最も大きな特徴です(表1、図2)。
  • 玄米に色素成分のアントシアニジンを含み、「朝紫」や一般モチ品種より食物繊維、カルシウム等を多く含みます(図3)。
  • 赤飯や雑穀飯をはじめとする調理飯のほか、多様な料理や加工品の素材としての利用が期待されます。
  • 一般品種への混入を防ぐために、播種、移植時に種子や苗の混入に注意するとともに、収穫時、脱穀調製時にも専用機械を用いる等の対策が必要です。また、出穂期が近い一般品種の周辺では、自然交雑の可能性があるので注意してください。
  • 登熟期が高温になる地域では、玄米の着色が悪くなる恐れがあることに留意してください。

図1.「奥羽紫糯389号」の草姿(移植栽培、育成地、2007年9月)

表1.「奥羽紫糯389号」の稈長、ふ先色、粗玄米収量、玄米千粒重(g)

図2.「奥羽紫糯389号」の玄米および籾

図3.「奥羽紫糯389号」の玄米成分含量(2007年育成産地、日本食品分析センターによる分析)

用語説明

朝紫
日本で初めての改良型の紫黒米モチ品種(1996年、東北農業研究センター育成)。

つぶゆき
日本で初めての極小粒ウルチ品種(2002年、青森県農林総合研究センター育成)。

アントシアニジン
アントシアニンの糖を含まないもの(アントシアニンのアグリコン)。植物の花や果実の色素成分。染料や食品の着色料などに利用されている。