プレスリリース
「稲発酵粗飼料貯蔵中のネズミ対策マニュアル」を作成

- ネズミの行動生態を利用した稲WCSの貯蔵方法 -

情報公開日:2009年9月25日 (金曜日)

ポイント

  • 稲発酵粗飼料(稲WCS)で問題となっている貯蔵中のネズミ被害の対策マニュアルを作成しました。

概要

農研機構 東北農業研究センター【所長 岡 三德】は、稲発酵粗飼料(稲WCS)で問題となっている貯蔵中のネズミ被害の対策マニュアルを作成しました。

稲WCSは薄いラップフィルムを巻き付けたロールベールサイレージとして貯蔵されますが、籾を食害するネズミによってラップフィルムが損傷を受けると容易に腐敗してしまいます。このネズミ被害の対策として、ネズミの行動生態を利用した「広々配置」というロールベールの配置方法を開発しました。今回作成したマニュアルは、この対策技術を普及するにあたり、そのノウハウをわかりやすく解説したものです。マニュアルはA4版5ページで希望者に無料で配布します。また、当研究センターHPからもダウンロードできます。

この成果は、農林水産省委託プロジェクト「粗飼料多給による日本型家畜飼養技術の開発」の予算によるものです。

予算

農林水産省委託プロジェクト「粗飼料多給による日本型家畜飼養技術の開発」(平成18~22年度)


詳細情報

マニュアル作成の背景・経緯

飼料イネの作付面積は、2008年に8900ha(全国)を超え、さらなる拡大が見込まれています。こうした生産の増加によって稲WCSの貯蔵量が増加し、貯蔵期間も長期化する傾向にあります。これに伴い、ネズミによる食害が見受けられるようになってきました。東北農業研究センターでは、ネズミ被害の対策研究に取り組み、ロールベールの配置方法を工夫することによってネズミ被害を軽減できることを突き止めました。通常、ロールベールは密集して積み重ねて貯蔵しますが、この配置方法では、ロールベールがネズミの天敵(猫、ヘビ、イタチ、猛禽類等)からの格好の隠れ場所を作ります。そこで、ロールベールの間隔を50cm以上空けて隠れ場所を作らないように広々と配置(広々配置、写真1)すると、ネズミの天敵に対する警戒心が高まるため、稲WCSへの食害が軽減できます(図1)。昨年来、この配置方法の普及に努めてきましたが、生産現場から、広々配置を行っても必ずしも効果が得られないという指摘を受けました。この技術は、ただロールベールの間隔を空ければ良いというわけではありません。ネズミ対策の基本と、技術の意図を理解して、効果を高めるための留意点に気をつけて実施することが重要です。このため、写真やイラストを豊富に使用し、対策技術をわかりやすく解説したマニュアルを作りました。マニュアルの使用によって、広々配置の効果が十分に発揮され、ネズミ被害が回避できることが期待されます。

写真1

図1

マニュアルの特徴

マニュアルはA4版5ページで、以下の5章で構成されています。

  • 稲WCSを狙うネズミ種
    ドブネズミなど日本のネズミ種のほとんどが稲WCSを食害します。
  • 図2

  • ネズミ種ごとの食害の特徴
    ネズミ種によって食害をうける部分が異なります。
  • 図3

  • 稲WCSにおけるネズミ対策の基礎知識
  • 最も大切な保管場所について解説するとともに、殺鼠剤・ワナや忌避剤などにも触れています。

    図4

  • 広々配置で守る!
  • 広々配置の意図を解説しています。

    図5

  • 広々配置の効果を高めるために
  • “ロールベールの間隔を空けさえすれば良い”というわけではありません。広々配置を行う上で知っておいていただきたい事項を解説しました。

    図6

マニュアルの入手方法

東北農業研究センター企画管理部 情報広報課(Tel 019-643-3414、 Fax 019-643-3588、e-Mailwww-tohoku@naro.affrc.go.jp)までご連絡ください。また、当研究センターHPからもダウンロードできます。

用語の説明

稲発酵粗飼料(稲WCS)
牛のエサ用に作付けられたイネ(飼料イネ)を、茎葉も含めて刈り取ってサイレージ化したもの。ほとんどがロールベールサイレージとして貯蔵されます。籾のみを収穫して、豚や鶏にも利用される飼料用米(エサ米)とは異なります。

ロールベールサイレージ
牧草などを円柱状に圧密成形したロールベールに、ラップフィルムを巻き付けることで気密状態を保ってサイレージ化したもので、「ラップサイロ」や「ロールパック」などとも呼ばれます。

ラップフィルム
ストレッチフィルムとも呼ばれます。ポリエチレンを主成分とする気密性、伸張性、粘着性に優れたロールベールサイレージ専用のフィルムです。通常、ロールベールに4~8層巻き付けます。ただし、厚さが0.025mmと薄いため、破損しやすいのが欠点です。

広々配置
稲WCSのロールベールを50cm以上(小型のミニロールは30cm以上)間隔を空けて配置する保管方法。稲WCSのネズミ食害対策に有効。この技術を普及するにあたって新しく作った用語です。