プレスリリース
南東北地方向け大豆新品種「里のほほえみ」

- ダイズモザイク病に強く、倒れにくい、大粒良質で高蛋白な大豆品種を育成 -

情報公開日:2009年9月25日 (金曜日)

ポイント

  • ダイズモザイク病に強く、大粒良質で蛋白質含量が高い豆腐用大豆品種「里のほほえみ」を育成しました。
  • 栽培適地は南東北地方向け、倒れにくいのでコンバイン収穫にも適しています。

概要

農研機構 東北農業研究センター【所長 岡 三德】は、ダイズモザイク病に強く、倒れにくく、大粒良質で蛋白質含量が高い大豆品種「里のほほえみ」を育成しました。

南東北地方の山形県で豆腐用大豆として作付けされている高蛋白品種の「エンレイ」は、ダイズモザイクウイルスに対する抵抗性が不充分です。また、ダイズモザイクウイルスに強い中粒品種の「スズユタカ」は、蛋白質含量が低めで小粒化が問題となっています。これに対し、「里のほほえみ」は、南東北地方向けでダイズモザイクウイルスに強く、倒れにくい、大粒良質で蛋白質含量が高い新品種として期待されます。


詳細情報

新品種育成の背景・経緯

国産大豆の主たる用途は豆腐であり、その代表的な高蛋白品種に「エンレイ」があります。「エンレイ」は、広域適応性を有することから南東北地方の山形県でも作付けされていますが、この地域で主に発生するダイズモザイクウイルスに対する抵抗性が不充分です。また、南東北地方で作付けされているダイズモザイクウイルスに強い中粒品種の「スズユタカ」は、蛋白質含量が低めで、かつ湿害や連作等による小粒化が問題となっています。そこで、東北農業研究センターでは、南東北地方向けの大粒でダイズモザイクウイルスに強く、さらに、耐倒伏性等の機械化適性を向上させた豆腐用の高蛋白品種の育成に取り組みました

ダイズモザイクウイルス抵抗性の「東北129号」を母、極大粒系統の「刈交0264MYF6」を父とした人工交配を行い、その後代について選抜と自殖を繰り返して、南東北地方向けのダイズモザイクウイルスに強く、かつ倒れにくく、大粒良質で蛋白質含量が高い「里のほほえみ」を育成しました。

新品種「里のほほえみ」の特徴

  • 「里のほほえみ」は、ダイズモザイクウイルスと紫斑病に強い抵抗性を示します(表1)。
  • 表1

  • 「里のほほえみ」は、倒伏に強く、最下着莢節位が高く、莢が割れにくい(難裂莢性)ことから、コンバイン収穫等の機械化適性に優れています(図1)。
  • 図1

  • 「里のほほえみ」は、大粒良質で蛋白質含量が「エンレイ」並に高く(図2)、豆腐の硬さも評価基準値を上回り、豆腐加工に適しています(図3)。
  • 図2

    図3

  • 「里のほほえみ」は、成熟期が「エンレイ」より1週間ほど遅い晩生で、栽培適地は南東北地方等です。
  • なお、ダイズシストセンチュウには「エンレイ」と同様に弱いので、過度の連作やセンチュウ被害の発生履歴がある圃場での栽培は避ける必要があります。

品種の名前の由来

東北の「里」で健やかに生育して、生産者や実需者の顔に「笑み」がこぼれることを願って、名付けました。

種苗の配布と取り扱い

平成21年5月19日に品種登録出願(品種出願登録番号:第23752号)を行い、平成21年7月29日に品種出願登録公表されました。

利用許諾契約に関するお問い合せ先

農研機構 情報広報部 知的財産センター 種苗係 Tel 029-838-7390 Fax 029-838-8905

用語説明

ダイズモザイク病
東北では主にダイズモザイクウイルスによって発生し、発症すると葉に葉脈透化が現れ、のちにモザイクとなり、縮葉症状を示し、種子には褐斑粒を生じる等、収量と品質の低下をもたらします。ダイズモザイクウイルスは5系統に分類され、その内、北東北地方では2系統の発生が多く、南東北地方以南及び関東地域ではそれらに加えて異なる2系統が発生します。
図5

広域適応性品種
広い地域や異なる季節等の広範囲な環境条件下で安定した高い収量を確保する遺伝的能力を示す品種です。

最下着莢節位高
子葉節より最下着莢節位までの高さを示します。これが高いとコンバイン収穫時の刈残し損失が少なくなります。
図6

難裂莢性
機械的衝撃に対して莢がはじけにくいことを表します。裂莢性の検定方法には循環式乾燥機を用いた熱風乾燥処理等があります。