開発の社会的背景
- 東北地域のソバ栽培の現状
東北地域のソバ作付面積は平成6年には約4,400haでしたが、次第に増加し、近年は13,000ha前後で推移しています。これは全国の約30%にあたり、東北地域はソバの重要産地となっています。その一方で収量は伸び悩み、10a当たりの平均収量が45kg/10aで、全国平均の約70%と低いため、生産量でのシェアは全国の約20%にとどまっています。
- 東北地域のソバ作付品種の現状
東北地域では、各県で育成された品種(「階上(はしかみ)早生(わせ)」、「最上早生」、「でわかおり」、「会津のかおり」、「岩手早生」など)に加え、他地域の主力品種(「キタワセソバ」、「常陸秋そば」など)の作付も多く、また在来種の栽培も少なくない状況となっています。
研究の経緯
ソバの作付面積が拡大する一方で収量が伸び悩んでおり、他地域からの導入品種や在来種の栽培も少なくない現状から、東北地域に適する新たな優良品種の育成を望む機運が生まれました。そこで、早生・多収・耐倒伏性を目標として平成12年度から新品種の育成試験がスタートしました。
「にじゆたか」は、「葛生(くずう)在来(ざいらい)」と「戸隠(とがくし)在来(ざいらい)」を交配して作出した集団から平成15年度に選抜した優良個体に由来します。平成20年度に、ソバ「東北1号」として品種候補系統となり、その後2年間の育成地以外での試験栽培や品質・加工適性など実需者による評価を経て、平成23年6月に「にじゆたか」として品種登録の出願を行いました。
新品種「にじゆたか」の特徴
- 従来の品種に比べ倒れにくいので、倒伏による収量低下が起こりにくく、機械による収穫作業が容易です(写真1)。
- 成熟期は「階上早生」より数日遅れますが、収量はやや上回ります(表1)。
- 子実は大きくて黒く、粒の張りがよく、外観がすぐれています(写真2)。
- 実需者による官能試験では、めんの味(甘み)、香り、食感(硬さや弾力)について「階上早生」を上回る良い評価を得ています(表2、写真3)。
今後の予定・期待
平成23年6月に品種登録を出願し、10月に出願公表されました。今年度は秋田、岩手、宮城の3県の生産者が試作し、収量性や品質の向上をめざす取り組みを始めています。来年もさらに多くの生産者が試作を始める見込みとなっており、「にじゆたか」が多くの産地でソバ生産の活性化に役立つことを期待しています。
品種の名前の由来
本年3月11日に発生した東日本大震災は、東北地域をはじめ各地に甚大な被害をもたらし、人々は大きな悲しみと苦難の中に置かれました。この大災害時に新品種に命名するにあたり、復興への願いを込めたいと考えました。「にじ=虹」で希望や夢のイメージを表現し、「ゆたか=豊か」な地域の復活を願い、「にじゆたか」と命名しました。
種子の入手に関するお問い合わせ先
農研機構 東北農業研究センター 企画管理部 業務推進室 運営チーム
Tel:019-643-3443 Fax:019-643-3405
利用許諾契約に関するお問い合わせ先
農研機構 連携普及部 知財・連携調整課 種苗係
Tel:029-838-7390 Fax:029-838-8905




