新品種育成の背景・経緯
ハトムギは耐湿性があり湿田でも栽培可能なことから、水田転作作物として栽培され、主にハトムギ茶として利用されています。産地では地域特産作物として重要な位置を占め、商品開発を行い特産品として加工・販売も行っています。そのため、安定供給、収益向上の面から収量性の高い品種が要望されています。
ハトムギは生育可能な気温が比較的高いため、寒冷地においては、特に冷夏では生育の遅延により成熟期に達しない場合があり、より熟期の早い品種が必要です。また、機械収穫をより効率的に行うために更に短稈の品種が求められています。そこで、ハトムギ生産の安定化と省力化を図るため、熟期が早く、草丈が短く、機械収穫適性の高い品種を育成しました。
新品種「はときらら」の特徴
- 「はときらら」の母親は早生・短稈系統の「東北1号」で、父親は極早生・極短稈品種の「オホーツク1号」です。平成7年に東北農業試験場資源作物育種研究室(現:農研機構東北農業研究センター畑作園芸研究領域)において人工交配し、15年間選抜を重ねて育成しました。
- 成熟期は「はとじろう」、「はとゆたか」より10~14日早い早生で(表1)、冷害年でも成熟に達します(表2)。
- 草丈は「はとじろう」と「はとゆたか」より約20~30cm短桿です(表1、写真1)。耐倒伏性は「はとじろう」や「はとゆたか」と同じく"中"で、葉枯病抵抗性は「はとじろう」や「はとゆたか」と同じ"やや弱"です(表1)。
- 殻実収量は「はとじろう」と同程度かやや多収です(表1、図1)。脱粒性は「はとじろう」と同程度で"易"です(表1)。
- 百粒重は「はとじろう」や「はとゆたか」より軽く(表1)、殻実の色は"茶褐色"であり、殻実の形は「はとじろう」が"長楕円"であるのに対し「はときらら」は"楕円"です(写真2)。
- ハトムギ茶への加工については、加工適性や製品歩留は「はとじろう」と同等であり、味や香りなどの品質も「はとじろう」と同じく"良"です(表3)。
品種の名前の由来
「はときらら」は、熟期が早い、草丈が短いなど、キラッと光る特性を持ったハトムギ品種であることを意味しています。
種子の入手に関するお問い合わせ先
農研機構 東北農業研究センター 企画管理部 業務推進室 運営チーム
Tel:019-643-3443 Fax:019-643-3405
利用許諾契約に関するお問い合わせ先
農研機構 連携普及部 知財・連携調整課 種苗係
Tel:029-838-7390 Fax:029-838-8905






用語の解説
はとじろう
青森県黒石市の在来種「黒石在来」から純系選抜して、1994年に東北農業試験場(現:農研機構東北農業研究センター)で育成された品種です。早生、短稈、大粒で、東北地域で多く栽培されている品種です。
はとゆたか
2003年に農研機構東北農業研究センターで育成された早生、大粒で収量性に優れた品種です。東北地方で栽培されています。
機械収穫適性
コンバインを用いた収穫作業に適した特性を備えていること。コンバイン収穫の場合は作物の草丈が短く、倒伏が少ないことなどが重要になります。一般に、草丈が長いと倒伏しやすくなり、また、刈り取られた株がコンバインの脱穀装置に取り込まれにくく、更に脱穀装置の内部で詰まりやすくなります。
耐湿性
土壌中の過剰な水分による酸素不足にも耐えて、良く生育する性質です。
水田転作作物
生産調整によって稲作を行っていた水田において、麦、豆、野菜、飼料作物、園芸作物等の他の農作物を生産することを水田転作といい、栽培される作物を水田転作作物といいます。
出穂期
止葉から穂の出ることを出穂といいます。ハトムギは全茎の40~50%が出穂した時期を出穂期とします。
成熟期
全殻実の80~90%が熟して品種特有の色(主に茶褐色)になった時期を成熟期とします。