プレスリリース
モザイク病、倒伏に強い納豆用の大豆新品種「すずほのか」を育成

情報公開日:2007年10月 3日 (水曜日)

要約

東北農業研究センターでは、東北地域の栽培に適した納豆専用の極小粒大豆新品種「すずほのか」を育成しました。本品種は、当研究センターが昭和62年に育成し、東北地域で広く栽培されている納豆専用の極小粒大豆品種「コスズ」の長所である納豆加工適性や極小粒を維持しつつ、栽培上の短所であるダイズモザイク病抵抗性と耐倒伏性を強化した品種です。今後、「すずほのか」は、納豆用大豆の新たな東北ブランドを目指して、「コスズ」の置換えを中心に普及が期待されます。


詳細情報

背景とねらい

国産の納豆用小粒大豆は堅調な需要があり、東北地域では、東北農業研究センター(当時、東北農業試験場)が昭和62年に育成した極小粒品種「コスズ」が作付けされています。しかし、「コスズ」は納豆加工適性が良好なものの、東北地方の主要な病害であるダイズモザイク病に対する抵抗性が不十分で、また倒伏しやすく、栽培しにくいのが短所でした。他方、本年から品目横断的経営安定対策が導入されたことから、大豆生産の規模拡大に対応可能な、機械化適性が高く栽培しやすい品種が一層求められています。

そこで、「コスズ」の長所である納豆加工適性や極小粒を維持しつつ、栽培上の短所であるダイズモザイク病抵抗性と耐倒伏性を強化し、併せて早熟化を図り、栽培しやすい納豆用の極小粒品種「すずほのか」を育成しました。

成果の内容・特徴

  • 「すずほのか」はダイズモザイクウイルス抵抗性で耐倒伏性、小粒、良質の「刈交778F5」を母、納豆用の極小粒品種「コスズ」を父とする交配組合せにより育成しました(図1)。
  • 成熟期は「コスズ」より1~2週間ほど早く、収量は「コスズ」並です(表1、写真1)。
  • 「コスズ」よりも主茎長が短く倒伏が少ないことから(表1、写真1、図2)、コンバイン収穫がしやすくなりました。また、ダイズモザイクウイルスに強く、「コスズ」より褐斑粒の発生が少ない特長があります(図2)。
  • 子実は極小粒で納豆加工適性は「コスズ」並に良好です(図3、図4)。
  • 栽培適地は東北全域で、「コスズ」との置換え等により普及が見込まれます。
    なお、ダイズシストセンチュウに弱いため、連作やセンチュウ汚染圃場での栽培はさける必要があります。

品種の名前の由来

品種名「すずほのか」は、莢が鈴なりに稔り、稔った大豆が香りかぐわしい納豆になるよう願って命名しました。

補足

コスズ
コスズは納豆加工適性が優れ、現在、宮城県や秋田県、岩手県を中心に普及し、平成17年度の東北における作付面積は約500haです。

ダイズモザイク病
ダイズモザイク病は、東北では主にダイズモザイクウイルスによって発生し、本ウイルスに抵抗性を持たない品種を栽培する場合には、ウイルスを媒介するアブラムシ防除が必要となり、費用低減の妨げとなります。

褐斑粒
褐斑粒は、ダイズモザイク病によって子実の表面に褐紋が生じるもので、外観品質を低下させ落等要因となります。

図1 「すずほのか」の系譜

表1 「すずほのか」の育成地および東北地域における成績

写真1 「すずほのか」と「コスズ」の熟期と耐倒伏性の違い

図2 「すずほのか」の生育中の障害と障害粒の程度

図3 「すずほのか」の納豆の硬さと明るさ

図4 「すずほのか」の納豆の官能評価