プレスリリース
東北農研が気象予測データを利用した農作物被害軽減情報サービスを開始

情報公開日:2007年6月 4日 (月曜日)

東北農業研究センターでは、インターネットを用いて東北地方の冷害等の被害軽減に役立つ情報を提供するシステム「気象予測データを利用した農作物被害軽減情報サービス」を開発しました。1km四方のメッシュに展開された東北地方の7日先までの気象予測データ、そのデータを用いた水稲の深水管理警報、水稲の生育予測情報などの情報を発信しています。この農作物被害の軽減のための情報システムの構築は、気象予測データを用いたものとしてはわが国初の取り組みです。本システムを利用することにより、予想される低温等に備えて早めの対策をとることが可能です。以下のURLに接続することにより、どなたでも無料で情報を閲覧することが出来ます。
ウェブサイトのURLはこちら
http://tohoku.dc.affrc.go.jp/yamase.html


詳細情報

背景とねらい

東北地方では、夏季の天候が1980年代以降大きく変動しており、冷夏と暑夏が交互に発生しています。そのような不安定な気象条件下において、安定した農作物栽培を行うためには、的確な気象予測に基づいた早期の被害軽減策を施すことが必要です。そこで、気象予測データを基にした農作物被害軽減情報を発信し、冷害等の異常気象に対する栽培管理を支援することを研究のねらいとしました。

成果の内容・特徴

  • 本システムは、データベースサーバとウェブサーバとで構成されています(図1)。データベースサーバは、気象予測データおよび1kmメッシュ気象データを、農林水産研究計算センターサーバから毎日自動で取得し、水稲の生育予測モデル等の計算を実行します。ユーザーは、ウェブサーバからの各種情報をGISソフトウェアと連動させて地図上に表示させて閲覧できます。
  • ウェブサイトのURLはhttp://tohoku.dc.affrc.go.jp/yamase.htmlです。この画面において、「水稲情報」アイコンをクリックすると、水稲被害軽減情報サイトへリンクしています(図2)。サイトへは、ユーザーIDおよびパスワードを入力することでログインすることができます。ユーザーID とパスワードは、本サイトからメールにより申請していただき、すぐに配布いたします。どなたでも無料でご利用いただけます。
  • 主な提供情報は、1kmメッシュ情報として展開された気象予測データ、気象予測データを用いた水稲の深水管理警報、水稲の出穂期予測情報です。
  • 温予測データでは、当日から7日先までの気温予測マップが見られるほか(図3)、GISソフトウェア機能により、選択範囲を拡大表示することや任意の1kmメッシュ単位での時間変化グラフも見ることができます(図4)。
  • 深水管理警報マップでは、予測気温17°C以下で水稲の深水栽培管理の励行が必要な地域がオレンジ~赤色で示されます(図5)。この深水管理警報は気温予測データに基づいて作成されるため、やがて来る低温に備えて早めの対策をとることが可能となります。さらに、エリアを拡大すると地名が表示されるため、任意の地域における1kmメッシュ情報を取得することが可能です。
  • 水稲の出穂期予測情報マップでは、「あきたこまち」と「ひとめぼれ」の危険期や出穂期の予測マップが見られます(図6)。これらの予測を参考にして、危険期に有効に深水管理を施すことが可能になります。
  • 本ウェブサイトの「寒締め菜っぱ情報」アイコンは、ホウレンソウ生育予測関連情報サイトへリンクしますが、本年秋以降の稼働になりますので別途発表の予定です。
  • 本研究は、農林水産省の先端技術を活用した農林水産研究高度化事業「やませ気象下の水稲生育・被害予測モデルと冷害回避技術の開発」により実施したものです。

図1 システムの概念図
図1 システムの概念図

図2 システムのメニュー画面
図2 システムのメニュー画面

図3 気象予測データのマップ表示
図3 気象予測データのマップ表示

図4 気象予測データの拡大表示と時間変化グラフ表示
図4 気象予測データの拡大表示と時間変化グラフ表示

図5 深水管理警報マップ
図5 深水管理警報マップ

図6 水稲出穂期予測マップ(あきたこまち)
図6 水稲出穂期予測マップ(あきたこまち)

用語説明

気象予測
データ最初に気象庁で計算された気象予測データを、日本気象協会でダウンサイジングし、さらに農林水産研究計算センターのサーバで1kmメッシュまで計算したデータを用いています。ちなみに「予報」とは、晴れや曇り等の天気の解釈まで入ったものを指し、本システムのようにデータのみを用いる場合は「予測」データと呼びます。

1kmメッシュ気象データ
東北農業研究センターで開発した計算システムを用いて、たてよこ約1km単位のメッシュ気温データを日々作成し、ウェブ上で配信しています。 URLはhttp://tohoku.dc.affrc.go.jp/trmain.htmlです。

GIS
Geographic Information Systemの略で、地理情報システムのこと。GISは、地理的位置を手がかりに、位置に関する情報を持ったデータ(空間データ)を総合的に管理・加工し、視覚的に表示し、高度な分析や迅速な判断を可能にする技術です。本ウェブシステムでは、気象予測データから水稲生育情報までを1kmメッシュ単位で閲覧可能に運用しております。

水稲の深水管理
水稲は幼穂が出来るときが一番低温に弱く、この時期に低温に当たると、花粉が正常につくられなくなって不稔となってしまいます(障害型冷害)。このように、やませが吹いて低温となる場合、まだ用水温の方が高いため、水田に水をためて、幼穂を水温で守って障害型冷害を防ぐことができます。このような水管理技術のことを深水管理といいます。