プレスリリース
新食感をもつ食品の開発が期待される寒冷地向けもち性小麦新品種「もち姫(ひめ)」

情報公開日:2007年1月29日 (月曜日)

独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 東北農業研究センターでは、「もちもち感」という新しい食感をもった小麦の開発に取り組んでまいりました。平成7年には、世界で初めてもち性小麦を開発していましたが、寒害および雪害に弱いなどの欠点があり、東北地方などの寒冷地で商業的に栽培できる品種はありませんでした。そこで、このたび、従来のもち性品種より耐寒性および耐雪性に優れ、東北地域での栽培に適する上に、多収で、小麦粉の色相も優れた、もち性小麦新品種「もち姫」を育成しました。 本品種により、「もち性」の特徴を活かした新しい食感をもつ菓子や煎餅などの開発が可能となり、地域の活性化につながることが期待されます。


詳細情報

背景とねらい

東北農業研究センターでは平成7年に世界初となるもち性小麦を開発し、後に「はつもち」等の名称で品種登録されました。もち性小麦については、「もちもち感」などこれまでにない食感を持つ加工食品の開発が期待されますが、「はつもち」については、寒雪害に弱くて収量性が低く、製粉歩留が低い等の欠点があり、商業的な栽培に至りませんでした。そこで、これらの欠点を改善し、東北地域での栽培に適するもち性小麦の新品種育成に取り組みました。

成果の内容・特徴

育成地(岩手県盛岡市)において、「もち姫」は既存のもち性小麦品種である「はつもち」と比較し、以下の特徴をもっています(図1~図4)。

  • アミロース含量は同程度できわめて低く、もち性です。
  • 製粉歩留が高く、灰分含量、粗蛋白質含量が少なくなっています。
  • 小麦粉の色相は、明度と白度の両方とも優れています(図3)。
  • 出穂期は3日遅いが、成熟期は同程度です。
  • 稈長は短く、寒害および雪害にはやや強く、収量性にも優れ(図4)、容積重が大きくなっています。
  • 穂発芽性は同程度の「やや難」、うどんこ病抵抗性も同程度の「やや強」です。
  • 栽培上の留意点として、もち性であることから、通常のうるち性品種と交雑しないように、他の品種と離して栽培するなどの注意が必要です。穂発芽性は「やや難」ですが、やませ地帯など登熟後期の気温が低くなりやすい地域では穂発芽しやすいので、適期収穫に努める必要があります。

用途について

もち性の特徴を活かした新しい食感を持つ菓子や煎餅などの用途が考えられます(図5)。

品種名について

品種名は、粉色が白く優れたもち性小麦であることと、利用が想定される菓子用をイメージしたものです。なお、本品種は農林水産省の農作物新品種命名登録評価検討会で命名され、小麦農林糯166号として登録されました。現在は、種苗法に基づく品種登録を出願中です。

図1 「もち姫」の草姿(東北農業研究センター、ドリル播栽培、2006年7月)
図1 「もち姫」の草姿(東北農業研究センター、ドリル播栽培、2006年7月)
左:ネバリゴシ、中:もち姫、右:はつもち

図2 「もち姫」の穂(正面及び側面)と子実
図2 「もち姫」の穂(正面及び側面)と子実
(穂、子実とも左:もち姫、中:ネバリゴシ、右:はつもち)

図3 「もち姫」の小麦粉の色相(明度と白度)
図3 「もち姫」の小麦粉の色相(明度と白度)
東北農業研究センター圃場、ドリル播栽培。平成11、13、14、16年度 4ヶ年平均。

図4 「もち姫」の収量性(kg/10a)
図4 「もち姫」の収量性(kg/10a)
東北農業研究センター圃場、ドリル播栽培。平成11~14、16、17年度 6か年平均。

図5 「もち姫」の加工品(試作品)
図5 「もち姫」の加工品(試作品)
(しんこもち、ロールケーキ、南部煎餅)