プレスリリース
東北地域での栽培に適する赤米モチ品種「夕やけもち」

情報公開日:2006年10月13日 (金曜日)

独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 東北農業研究センターでは、早生で耐冷性が強く、東北地域での栽培に適する赤米モチ新品種「夕やけもち」を育成しました。本品種により、有色米を活用した地域の活性化が期待できます。

背景とねらい

近年、有色米への関心が高まるとともに、各地で在来種、改良品種が栽培されています。東北地域で普及している赤米品種として、改良ウルチ品種の「紅衣」(2002年)がありますが、有色米を扱う業者からは利用範囲がウルチよりも広い赤米モチに対する要望が高まっています。今までに育成された赤米モチ品種の中で、「つくし赤もち」(1995年)、「あかおにもち」(2003年)、「紅染めもち」(2004年)は熟期が晩生のため東北地域では栽培できず、「紅香(べにか)」(2001年)はモチの香り米であるため、用途が限られています。そこで、東北地域での栽培に適した赤米モチ品種の育成を目指しました。

成果の内容・特徴

  • 「夕やけもち」(図1、図2)は、「紅衣」よりやや遅い出穂期で、東北中南部では"早生の晩"に属するモチ品種です。
  • 稈長は短くて倒伏に強く、脱粒しにくいため、一般品種と同様に機械化体系での栽培が可能です。ふ先(籾の先)色は紫色で、出穂後であれば一般品種と識別することができます(表1)。
  • 玄米収量は「たつこもち」と同程度で、一般のモチ品種並の収量があります(表1)。
  • 「たつこもち」の玄米と比較して、食物繊維、タンニン、カテキンの含量が高くなっています(表2)。
  • 赤飯、赤がゆ、雑穀飯などの着色米飯、赤餅、赤米醸造酒などの加工品への利用が期待されます(図3)。
  • 栽培上の留意点として、一般品種への混入を防ぐために、播種、移植時に種子や苗が混入しないように注意するとともに、収穫時、脱穀調整時にも専用機械を用いるなどの対策が必要です。また、出穂期が近い一般品種の周辺では、自然交雑の可能性があるので注意が必要です。
  • 本研究は、農林水産省プロジェクト研究「新鮮でおいしい『ブランドニッポン』農産物提供のための総合研究」予算で実施されました。

品種の名前の由来

赤く染まった夕やけのように、美しく輝く赤モチ米であることを表しています。


詳細情報

図1 「夕やけもち」の草姿(移植栽培、育成地、2005年9月)
図1 「夕やけもち」の草姿(移植栽培、育成地、2005年9月)
(ラベルより左:紅衣、右:夕やけもち)

図2 「夕やけもち」の籾及び玄米
図2 「夕やけもち」の籾及び玄米
(左:夕やけもち、右:紅衣)

表1 「夕やけもち」の稈長、ふ先色と玄米収量

表2 「夕やけもち」の玄米中の健康機能性成分

図3 「夕やけもち」の加工品(試作品)
図3 「夕やけもち」の加工品(試作品)
(左から、切り餅、醸造酒、そば)