東北農業研究センターでは、日本短角種の肉牛に稲のサイレージ(稲発酵粗飼料)を多給して肥育すると牧草サイレージを給与して肥育した場合に比べて、体重の増加が大きく、さらに、その牛肉は抗酸化作用のあるα-トコフェロール(ビタミンE)を多く含み、冷蔵保存しても新鮮な肉色が維持されることを明らかにしました。
背景とねらい
食料自給率を高めるために国産飼料を活用する肉牛の飼養技術の確立が求められています。稲発酵粗飼料は水田での栽培が容易な稲を飼料として利用する方法です。また、稲発酵粗飼料は牛での嗜好性が良いので牛に大量に食べさせることができます。そこで稲発酵粗飼料を飽食させて肥育した場合の牛の体重の増加や牛肉の特徴を調べました。
成果の内容・特徴
- 全肥育期間を通して、飽食するまでの量の稲発酵粗飼料と一定量の濃厚飼料(体重の1.6%以内)を給与された牛では、飽食するまでの量の牧草サイレージと一定量の濃厚飼料(体重の1.6%以内)を給与された牛に比べて肥育期間中の粗飼料摂取量が多くなり、濃厚飼料摂取量が少なくなる傾向がみられました(図1、図2)。
- 稲発酵粗飼料を飽食するまで給与された牛では肥育期間中の一日当たりの体重増加が牧草サイレージを飽食するまで給与された牛に比べて6%多くなりました(図3)。
- 稲発酵粗飼料を飽食するまで給与された牛では、牧草サイレージを給与された牛に比べて肉中の粗脂肪の含量が1.9倍高くなりました(図4)。
- 稲発酵粗飼料を飽食するまで給与された牛では、肉中のα-トコフェロール含量が牧草を給与された牛に比べて1.8倍多くなりました(図5)。その結果、保存中の肉色の褐色化が抑制されました(図6)。
- この研究は、農林水産省「新鮮でおいしい『ブランド・ニッポン』農産物提供のための総合研究」予算により実施されました。