プレスリリース
前作大麦のカバークロップ効果で大豆が増収

情報公開日:2006年7月27日 (木曜日)

東北農業研究センターは、不耕起で大豆を栽培する前の冬作に大麦を栽培すると、雑草を抑えるカバークロップ効果により、大豆の収量を20%程度増加させることができることを実証しました。条件の良い場合にはカバークロップの栽培だけで除草剤を使わない栽培も可能です。

背景とねらい

食品に対する安全・安心への期待の高まりから、除草剤などの資材の使用を極力減らした栽培技術の開発が求められています。一方、東北地方では気象条件の制約から畑作物は単作となっており、一年のうちのかなりの期間、農地があいているのが現状です。しかし、収穫を目的としないカバークロップなら栽培可能期間が短くても導入しやすく、雑草防除等に活用することが期待されます。さらに、不耕起栽培では土の中にある雑草の種子が発芽しにくく、カバークロップによる雑草防除効果が高まることがわかっています。そこで、大豆栽培において、カバークロップと不耕起条件を積極的に活用して雑草を抑える技術の開発を行っています。

成果の内容・特徴

  • この技術は、大豆栽培で、雑草防除を目的として、前作にカバークロップとして大麦を栽培するものです。大麦は、大豆の播種時に未熟な子実を含む地上部のすべてを細断して地表面に敷きます(図1)。
  • カバークロップに大豆の狭畦栽培(30cm程度)を組み合わせると、中耕などの中間管理を行わなくても雑草の量を減らし、大豆の収量を最大で20%程度高めることができます。その効果は、大豆の播種時に除草剤を散布することでさらに高まります(図2)。
  • カバークロップで雑草の量が減るのは、カバークロップが地表面を覆うことで出芽する雑草の数が減るためです(図3)。
  • この技術には、雑草を抑えて大豆の収量を高めるだけでなく、有機物の投入による地力維持効果なども期待されます。今後、こうした機能についても検討しながら、いろいろな場面で採用が可能な技術にしていくことをめざします。
  • 本研究成果は、農林水産省受託研究「生物機能を活用した環境負荷低減技術の開発」により得られたものです。

詳細情報

図1 大豆の不耕起カバークロップ栽培技術の概要
図1 大豆の不耕起カバークロップ栽培技術の概要

  • 秋に播種した大麦の全量を大豆播種時に細断して敷くと
  • 地表面は大麦の残さで覆われて
  • 雑草を抑える。

図2 カバークロップによる雑草の抑制効果と増収効果
図2 カバークロップによる雑草の抑制効果と増収効果

大豆の品種「ふくいぶき」。条間30cmで5g/m2を播種。除草剤は、カバークロップありの区ではトリフルラリン(土壌処理型除草剤)を、カバークロップなしの区ではそれに加えてグリホサートアンモニウム塩(茎葉処理型除草剤)を大豆の播種時に散布。大麦(カバークロップ)の品種「べんけいむぎ」。条間30cmで10g/m2を耕起後播種。データは2年間(2003年、2004年)の平均値。雑草量は最も繁茂した8月下旬のデータ。

図3 カバークロップによる雑草出芽数の減少
図3 カバークロップによる雑草出芽数の減少

両区とも除草剤を散布。データは主要雑草の合計値。イネ科雑草はメヒシバ、イヌビエ、アキノエノコログサ。広葉雑草はシロザ、ヒユ類、タデ類。

用語説明

カバークロップ
土壌浸食防止、景観の向上、雑草抑制などを目的として、休閑期に露出する地表面を被覆するために栽培される作物。被覆作物。主にライグラス類やライ麦、大麦などの麦類やレンゲ、ヘアリーベッチなどのマメ科植物をそれぞれの生育、栽培特性に応じて、さまざまな場面で活用する試みが進んでいる。

不耕起栽培
作物を栽培するときには、普通、耕起、砕土、整地、中耕など土を耕す作業が行われるが、それらを省略する栽培方法をいう。日本ではまだあまり普及していないが、大豆などの畑作物栽培では省力化、低コスト化、土壌保全などを目的として研究が行われてきている。耕す作業には生えている雑草を枯殺する効果があるが、それを行わない栽培方法であるため、普通の栽培方法に比べて除草剤の散布量は多くなる傾向がある。しかし、土の中で眠っている雑草の種子を掘り起こすことがないため、工夫次第では、雑草の発生量を減少させることができると考えられている。