プレスリリース
雑草量に応じて耕深と作業速度を変更し中耕作業の能率を向上させる

情報公開日:2006年7月27日 (木曜日)

畑作の雑草管理作業として重要な中耕作業において、圃場内の場所ごとの雑草量に応じ、必要な中耕の程度に合わせて耕深と作業速度を変更しながら作業できる機械を開発しました。これにより、これまで雑草量の多い部分に合わせて深くかけられていた中耕を減らし、その分作業速度を上げて、作業能率を向上させることができます。

背景とねらい

中耕は物理的な除草効果が高く、畑作物にとって重要な管理作業ですが、作業能率が低いという問題があります。農作業時間を削減して生産コストを引き下げる観点からは、こうした中耕作業の能率を高める技術開発が重要です。そこで、中耕の必要程度を局所的に判断し、それに応じて適度な中耕作業を行うことができれば、作業能率を高め、無駄なエネルギー消費を抑えることができると考えられます。例えば、雑草が繁茂している場所では、耕深を深くして低速で作業することにより雑草の根の切断や埋草を良好にする、逆に雑草が少ない場所では、耕深を浅くして高速で作業することで作業能率を向上させる、といったことが可能となります。ここでは、耕深と作業速度とを組み合わせて、「中耕強度」と定義します。この中耕強度を、圃場内で局所的に可変制御しつつ中耕作業ができる作業機を開発しました。

成果の内容・特徴

  • 本作業機は、3条のロータリ式中耕作業機を装着したミッドマウント型乗用管理機を、中耕の耕深と作業速度をワンタッチで同時に制御できるように改造したものです。
  • 耕深制御は、作業機ヒッチの昇降レバーを電動シリンダで駆動して、作業機位置を上下させて行います。作業速度制御は、HSTの変速レバーを電動シリンダで駆動・位置決めして行います。オペレータが中耕強度(1から5までの5段階)をコントローラで設定すると、耕深と作業速度が同時に制御され、中耕強度が変化します (図1)。
  • 中耕強度を大きくする場合には、耕深を深くかつ作業速度を遅く、また、中耕強度を小さくする場合には、耕深を浅くかつ作業速度を速くするように制御します。整地圃場(作物なし)での動作では、5段階のそれぞれの中耕強度において標準偏差10mm以下の精度で耕深の制御が可能でした。その際の作業速度と併せると、図2に示すような中耕強度の変化設定(5つのデータ点が、5段階の中耕強度設定)となります。
  • 実際の栽培圃場において、全体の40%程度の作業距離を高速浅耕、残りを低速深耕と設定して、強度可変中耕作業を行いました。その結果、全作業を低速深耕とした通常の作業に比べ、作業能率(圃場作業量)が向上しました(図3、表1)。

詳細情報

図1 耕深・作業速度の制御方式

図2 中耕強度の設定

図3 強度可変中耕作業機
図3 強度可変中耕作業機

表1 強度可変中耕作業の結果

用語説明

中耕
条に栽培されている作物の、畝間を耕耘する作業。雑草を切断して土に埋め込むことによる除草効果や、土を膨軟にして根の発達を促すとともに空気を供給しやすくする効果などがある。培土(作物の株元へ中耕で砕かれた土を寄せる作業)と同時に実施されることも多い。

HST
油圧による無段変速機構

乗用管理機
中耕や薬剤防除などの管理作業を行うための乗用車両。数馬力~20馬力程度のエンジンを積んでいる。

ミッドマウント
作業機を前輪と後輪の間に装着する方式。作業部分をオペレータが見やすい。

ロータリ式中耕作業機
爪を取り付けた軸を回転させる方式の中耕作業機。土を攪拌するので、畝間にある雑草を切断し土に埋め込む作用が大きい。ロータリカルチベータともいう。