規格化された288穴のセルトレイを用い、ネギ種子を播種し、底面灌水方式で生育のそろった苗を育苗し、全自動ネギ移植機で7.5cm間隔で移植する低コストネギ苗移植システムを開発しました。これによって、安価でかつセル数の多い規格化されたセルトレイを使用することができ、資材費、育苗面積、苗補給回数が低減(育苗資材費は約50%減)し、ネギ生産の規模拡大につながります。
背景とねらい
ネギは、その栽培法の特殊性と生産農家の規模が小さいことから移植システムは小型で簡易な機械が使われているのみであり、コスト高につながっています。しかし、厳しい国際競争を強いられている現在、低コスト生産技術を早急に確立することが求められています。そこで、ネギの播種・育苗・移植作業における省力・低コスト化を図るために、規格化され、安価であるにもかかわらず、これまであまり使われていない 288穴セルトレイを用いた播種・育苗・移植技術を開発しました。
成果の内容・特徴
- ネギ種子を播種するための機械として 288穴セルトレイ用の播種機を開発しました。これは、土を詰めたセルトレイに播種穴を開け、コート種子を播種、覆土する機械で、ネギのコート種子を99%以上の播種精度で、1時間でトレイ120枚の播種が行えます(図1)。
- 播種した種子を発芽させ、育苗するための装置として底面灌水型の育苗装置を利用する方法を開発しました。底面灌水型の育苗装置はセルトレイを置く育苗槽と灌水液用タンク、ポンプで構成されています。給水時はポンプで灌水液を育苗槽に満たし、セルトレイの底穴から水を与え、十分に灌水した後は、ポンプを止め、戻り管を通じて灌水液を排水します(図2)。 1日1回水深10~20mmになるまで底面から給水して育苗することにより、約50日で根鉢が形成され、かつ生育のそろった苗ができます(図2)。 給水作業は自動的に行われるので、面倒な灌水作業が省けます。
- 育苗したネギ苗を移植するための機械として 288穴セルトレイ用全自動ネギ移植機を開発しました。この機械は、セルトレイの苗を一本ずつ引き抜いて移植する機械です。前輪は植え溝の中を走るため、自動的に直進走行し、植え付け中は作業者は苗の手直しをすることができます。植付けた苗の間隔は7.5cmで、10aを2.5~3.0時間で移植することができます(図3)。
- このシステムでネギ苗を播種・育苗・移植した場合、ネギの生育や収穫時の1本当たりの調製重・軟白部太さ等は、すでに普及している 220穴専用セルトレイによるシステムとほぼ同等であり、遜色はありません(図4)。
- 現在普及している 264穴連結紙筒や 220穴専用セルトレイによるシステムと比較して、単位面積で必要なセルトレイ数が少なくなり、育苗面積や移植時における苗の補給回数が約30~40%少なくなります。また、セルトレイは安価で、必要な培土量も少ないので、育苗に必要な資材費は約50%削減されます(表1)。
- 本研究成果は、農林水産省受託研究「新鮮でおいしい「ブランド・ニッポン」農産物提供のための総合研究 6系」により実施したものです。