プレスリリース
寒冷地・積雪下における冬春期野菜の安定生産に向けた技術開発を開始

情報公開日:2005年11月29日 (火曜日)

東北地域では、冬場の低温・積雪条件のため野菜の栽培が困難であり、冬から春にかけての時期、全般的に野菜の生産が激減するため、産地直売所や大型量販店への地場産野菜の周年供給ができていません。このため、冬春期の地産地消型野菜を安定生産するための新たな栽培技術を開発する「寒冷地・積雪下における冬春期野菜の安定生産技術の開発」研究を、今年度からスタートさせています。

背景とねらい

最近、産地直売所が元気です。生産者の顔が見える安全安心を優先する人たちは、農産物を産地直売所で購入する機会が増えているようです。特に東北はこのような地産地消的な消費が盛んな地域です。しかし、東北では冬場の低温・積雪条件のため野菜の栽培が困難ですので、冬から春にかけての時期、全般的に野菜の生産が激減しており、しかもその傾向は最近強くなっています(図1、2)。そのため、産地直売所や大型量販店などの流通業者からの地場産野菜を周年供給してほしいという要望に応えられてきませんでした。そこで、冬春期の地産地消型野菜を安定生産するための新たな栽培技術を開発することが求められています。また、東北農政局からも東北地域独自の研究課題として早急な技術開発が要望されていました。このプロジェクトでは、野菜の中でも地産地消型としての性格の強い葉菜類および根菜類を対象として、東北の厳しい冬期間において、必要最小限のコスト・エネルギー投入、もしくは積雪を積極的に利用する方法等による安定生産技術の開発研究を進めます 。

成果の内容・特徴

  • 露地で栽培された根株を掘り上げ、これを温床に伏せ込み萌芽させて収穫する方式を用い、摘み取り型の野菜を生産する冬期伏せ込み栽培の方法が、最小限の暖房ですむ点で有利性を持つと考えられます。東北の広大な土地を上手く活用した技術となりえるもので、アスパラガスを対象として生産技術の安定化を図るとともに、その他の品目についてもこの方法が適用できないかを検討します 。
  • 多雪地帯においては、キャベツなどの結球野菜やダイコン・ニンジンなどの根菜類を雪の下で長期貯蔵し、これを随時収穫していく方法で冬期から春にかけて継続出荷する方法が、小規模に行われてきましたが、これを安定的な技術として確立させます。雪の下で越冬した野菜はおいしくなるといわれていますが、そのことについても詳しく品質を調査して実証します。また、融雪後速やかに伸長する生育の早いネギやホウレンソウといった品目を利用した早春どりの作型についても検討します 。
  • 施設利用を前提として、空気膜二重構造、チューブハウスなどの新しい機能性を持つ資材を利用した保温性の向上、あるいは太陽光・風力などの自然エネルギーの利用について検討し、栽培施設そのものの改善を図り、冬春期生産の一助とします 。
  • 加する研究機関は以下のとおりです。
    東北農業研究センター、岩手県農業研究センター、宮城県農業・園芸総合研究所、秋田県農業試験場、山形県農業総合研究センター、岩手大学、秋田県立大学短期大学部、東罐興産(株)
  • 本プロジェクト研究は、農林水産省の「先端技術を活用した農林水産研究高度化事業」という補助事業の資金を得て、平成17年度から3年間の計画で実施します。

詳細情報

図1 仙台中央卸売市場における東北産ダイコンの市場占有率(平成14年)
図1 仙台中央卸売市場における東北産ダイコンの市場占有率(平成14年)

図2 仙台中央卸売市場における東北産ブロッコリーの市場占有率(平成14年)
図2 仙台中央卸売市場における東北産ブロッコリーの市場占有率(平成14年)

用語説明

冬期伏せ込み栽培
通常の畑で夏期に株を養成し、根に栄養分を蓄えさせ、秋にこの株(根株という)を掘り上げ、芽が伸びるのに適した温度に温めたベッド(温床という)に活け、伸びてくる芽をつみ取りながら収穫する方法です。アスパラガスやウドで一部行われている方法です。加温する面積が少なくてすむ省エネ的な栽培法で、根株を養成する場所として水田も使えるので、水田転作にも貢献します。

空気膜二重構造ハウス、チューブハウス
いずれも、空気の断熱性の高さを利用して、プラスチックフィルムの間に空気の層を作り、それでビニルハウスを被覆する方法です。空気の層がない場合に比べて、保温効果が増します。