東北農業研究センターを始めとする研究コンソーシアム(東北大学大学院農学研究科、福島県ハイテクプラザ、福島県農業試験場、ミナト製薬株式会社)は、血糖値上昇抑制物質である1-デオキシノジリマイシン(DNJ)を豊富に含む桑葉の原料条件を明らかにし、DNJを高含有する桑葉食品の製造技術を開発しました。
背景とねらい
桑葉は血糖値の上昇を抑制する効果を持つことが知られており(図1)、その効果は主に桑葉に含まれるDNJによるものと言われています(図2)。DNJは構造が糖に類似しているために、小腸において糖の吸収を阻害することにより、血糖値の上昇を抑制すると考えられます。本成果によりDNJを高含有する桑葉食品の製造が可能となりました。機能性を有する桑葉食品により新たな需要が喚起され、遊休桑園を解消し、中山間地域に新たな産業をおこす基盤となることが期待されます。
成果の内容・特徴
- 桑葉における部位別や品種別のDNJ含量を分析し、桑葉食品(桑葉茶や桑葉エキスなど)の原料として最適な、DNJを高含有する桑葉の条件を明らかにしました。
a.) DNJは枝先端の若い葉に多く存在し、新芽に最も多く含まれる。
b.) 「鶴田」「はやてさかり」などの品種は、一般に桑葉食品に用いられている品種の「一ノ瀬」よりもDNJを多く含む。 - 桑葉の先端部の効率的な収穫法を検討しました。茶刈機等を用いることで常に先端部の葉を収穫し、DNJを安定的に高含有する素材原料が得られます。
- 上記知見に抽出条件等を加え、DNJを高含有する桑葉食品の製造技術を開発しました(特許出願中 特願2005-254708)。これにより、桑葉茶で5倍近く(エキスでは10倍以上)のDNJを従来製品より高含有する桑葉食品の製造が可能となります(図3,4)。
- 現在、試作品を使い、動物およびヒトでの血糖値上昇抑制および糖尿病予防効果について検証を行っています。
本研究は、農林水産省の「平成16年度先端技術を活用した農林水産研究高度化事業」により実施されました。