プレスリリース
血糖値上昇抑制物質1-デオキシノジリマイシンを高含有する桑葉食品の製造条件を解明

情報公開日:2005年10月19日 (水曜日)

東北農業研究センターを始めとする研究コンソーシアム(東北大学大学院農学研究科、福島県ハイテクプラザ、福島県農業試験場、ミナト製薬株式会社)は、血糖値上昇抑制物質である1-デオキシノジリマイシン(DNJ)を豊富に含む桑葉の原料条件を明らかにし、DNJを高含有する桑葉食品の製造技術を開発しました。

背景とねらい

桑葉は血糖値の上昇を抑制する効果を持つことが知られており(図1)、その効果は主に桑葉に含まれるDNJによるものと言われています(図2)。DNJは構造が糖に類似しているために、小腸において糖の吸収を阻害することにより、血糖値の上昇を抑制すると考えられます。本成果によりDNJを高含有する桑葉食品の製造が可能となりました。機能性を有する桑葉食品により新たな需要が喚起され、遊休桑園を解消し、中山間地域に新たな産業をおこす基盤となることが期待されます。

成果の内容・特徴

  • 桑葉における部位別や品種別のDNJ含量を分析し、桑葉食品(桑葉茶や桑葉エキスなど)の原料として最適な、DNJを高含有する桑葉の条件を明らかにしました。
    a.) DNJは枝先端の若い葉に多く存在し、新芽に最も多く含まれる。
    b.) 「鶴田」「はやてさかり」などの品種は、一般に桑葉食品に用いられている品種の「一ノ瀬」よりもDNJを多く含む。
  • 桑葉の先端部の効率的な収穫法を検討しました。茶刈機等を用いることで常に先端部の葉を収穫し、DNJを安定的に高含有する素材原料が得られます。
  • 上記知見に抽出条件等を加え、DNJを高含有する桑葉食品の製造技術を開発しました(特許出願中 特願2005-254708)。これにより、桑葉茶で5倍近く(エキスでは10倍以上)のDNJを従来製品より高含有する桑葉食品の製造が可能となります(図3,4)。
  • 現在、試作品を使い、動物およびヒトでの血糖値上昇抑制および糖尿病予防効果について検証を行っています。

本研究は、農林水産省の「平成16年度先端技術を活用した農林水産研究高度化事業」により実施されました。


詳細情報

図1 桑葉(粉末)を食べると血糖値が上がらない

図2 DNJは糖分の吸収を抑制する

図3 品種の選択と新製法によりDNJを多く含む桑葉食品ができる

図4 新芽を使用しDNJを高含有する桑葉食品

用語説明

糖負荷試験
糖尿病の検査に一般に用いられる試験。空腹時にブドウ糖75gを水に溶かして飲み、経時的に血糖値(または、尿糖、血中インスリンなど)を測定し、その変化を観察する。正常な場合、血中に取り込まれたブドウ糖(血糖値)は30分~60分でピークを迎え、その後インスリンの働きにより2時間程度で元に戻る。

プラセボ
ヒト試験を行う場合、有効成分を含まないにもかかわらず、「薬を飲んだ」という意識から薬効とは関係なく治療効果が出ることがある。そのため、試験薬と薬効や安全性などのデータを比較するために用いられる偽の薬(今回は食品)。通常、治験薬と色や形は似ていながらも、有効成分は含まない。

1-デオキシノジリマイシン(DNJ)
桑より初めて見出されたブドウ糖に極めて構造が類似している糖様物質(左図参照)。食物のデンプンなどの炭水化物は消化され、最終的に小腸上皮にあるα-グルコシダーゼと呼ばれる糖分解酵素によりブドウ糖に分解され、体内へ吸収される。DNJはこのα-グルコシダーゼの強力な阻害剤して知られる。
1-デオキシノジリマイシン(DNJ)