プレスリリース
耐冷性が強くGABA(ガンマアミノ酪酸)を多く含む巨大胚水稲新品種「恋あずさ」

情報公開日:2005年9月16日 (金曜日)

機能性成分のGABA(ガンマアミノ酪酸)含量が一般品種に比べて高く、耐冷性が非常に強いため東北地域での栽培に適した、胚芽が大きい巨大胚の水稲新品種「恋あずさ」を育成しました。発芽玄米等の加工用としての利用が期待されます。

背景とねらい

近年、消費者の健康志向の高まりから、通常の玄米よりもGABA含量が高い発芽玄米の市場が拡大しています。胚芽が大きい巨大胚米はGABA含量が一般米よりも高いため、発芽玄米にするとGABA含量はさらに高くなります。これまでに巨大胚品種として「はいみのり」(2000年)、「めばえもち」(2002年)が育成されましたが、「はいみのり」は極晩生のため東北地域では栽培ができず、「めばえもち」はもち品種であるために用途が限られます。そこで、東北地域での栽培に適した巨大胚のうるち品種の育成を目指しました。

成果の内容・特徴

  • 「恋あずさ」は、「あきたこまち」と同程度の出穂期で、東北中南部では"早生の晩"に属するうるち品種です(図1)。
  • 胚芽の重さは「あきたこまち」の約2倍あります(図2)。玄米に含まれるGABA含量は玄米100g当たり13.0mg(「あきたこまち」玄米の6.5倍)あり(図3)、発芽玄米にするとGABA含量は24.2mg(「コシヒカリ」発芽玄米の約2倍)に増加します。
  • 耐冷性が"極強"で冷害の影響を受けにくいため、東北地域での栽培に適しています(表1)。
  • 発芽玄米にした際、硬さや舌ざわりが気になる場合には、「あきたこまち」等の一般米や粘りの強い低アミロース米と混ぜるとおいしく食べられます。
  • 栽培上の留意点としては、種子の出芽率が一般品種よりやや劣りますが、播種量を増やす(重量比で約1.5倍)ことで一般品種と同程度の出芽数を得ることができます。また、いもち病に弱いため、適期に防除を行う必要があります。

品種の名前の由来

"恋の芽生え"と胚芽の芽生えをかけ、恋しくなるほど食べたくなる米であること、また、「あずさ」は最初に本品種で発芽玄米を開発した梓川(あずさがわ)(長野県松本市)にちなんでいます。


詳細情報

図1 「恋あずさ」の草姿(育成地、2004年9月)
図1 「恋あずさ」の草姿(育成地、2004年9月)

図2 「恋あずさ」(左)と「あきたこまち」(右)の玄米
図2 「恋あずさ」(左)と「あきたこまち」(右)の玄米

図3 「恋あずさ」と「あきたこまち」の玄米中のGABA含量
図3 「恋あずさ」と「あきたこまち」の玄米中のGABA含量

表1 「恋あずさ」の玄米収量と耐冷性