プレスリリース
直播栽培に適する東北地域向け稲発酵粗飼料用の新品種「べこあおば」

情報公開日:2005年9月16日 (金曜日)

収穫時期が早く、しかも乾物重(TDN収量)が高くかつ安定している東北地域向けの稲発酵粗飼料用新品種「べこあおば」を育成しました。直播栽培にも適するため、稲発酵粗飼料の省力生産が可能になります。

背景とねらい

米の生産過剰により水田では転作が求められている一方で、国内産の安全な自給飼料の生産拡大が重要な課題となっています。その中で、飼料イネは飼料自給率を向上できる転作作物として注目されています。現在までに育成された稲発酵粗飼料用品種は晩生のものが多く、生育期間が限られる東北地域に適したものは少ない状況です。そこで東北地域での飼料イネ生産を促進するために、東北地域で栽培可能な熟期の稲発酵粗飼料用品種の育成を図りました。

成果の内容・特徴

  • 「べこあおば」は東北南部以南向けの稲発酵粗飼料用品種「クサユタカ」より出穂期で2日程度、黄熟期で7日程度早く、東北中南部では"中生の晩"に属するうるち品種です(図1、表1)。玄米は極大粒で、一般品種との識別性があります(図2、表1)。
  • 黄熟期におけるTDN収量は、多収品種「ふくひびき」よりも1割程度多収です(表1)。
  • 「クサユタカ」、「ふくひびき」よりも倒れにくく、直播栽培に適しています(表2)。
  • 家畜ふん堆肥を多量に施用した極多肥条件でも倒れずに、乾物重が多くなることから、畜産との連携において家畜ふん堆肥を利用した多肥栽培にも適しています(表3)。
  • 安定した乾物重と栄養価を得るためには、黄熟期以降に収穫を行うことが重要です。

品種の名前の由来

東北のべこ(牛:東北の方言)が好んで食べる飼料イネで、東北地域でたくさん普及してほしい、という願いを表しています。


詳細情報

図1 「べこあおば」の草姿(移植栽培、育成地、2004年9月)
図1 「べこあおば」の草姿(移植栽培、育成地、2004年9月)

表1 「べこあおば」の移植栽培での生育特性(育成地)

図2 稲発酵粗飼料用品種「べこあおば」(左)、「クサユタカ」(中央)と一般品種「ふくひびき」(右)の玄米と籾
図2 稲発酵粗飼料用品種「べこあおば」(左)、「クサユタカ」(中央)と一般品種「ふくひびき」(右)の玄米と籾

表2 「べこあおば」の直播栽培での生育特性(育成地、2004年)

表3 「べこあおば」の家畜ふん堆肥施用時の乾物重(育成地、2004年)

用語説明

稲発酵粗飼料
ホールクロップサイレージ(WCS)ともいい、稲の米粒が完熟する前(糊熟期~黄熟期)に、穂と茎葉を同時に刈り取り、発酵させてサイレージ化(漬け物のようなもの)した粗飼料。一般的に、サイレージ化はロール状にした穂や茎葉をフィルムで包み込み、発酵させて作られます。

TDN収量
TDN(Total Digestible Nutrients)は飼料の栄養価(エネルギー含量)を表す単位であり、可消化養分総量ともいいます。消化吸収される飼料の養分の総量をさします。TDN収量は、単位面積あたりにおける消化吸収可能な粗飼料の収量です。