青臭みの原因であるリポキシゲナーゼと強いえぐ味を呈するグループAアセチルサポニンを欠失した大豆新品種「きぬさやか」を育成しました。「きぬさやか」は熟期が晩生の早で子実は中粒、豆乳や豆腐は青臭みやえぐ味が少なく、豆乳はすっきりした味わいです。これまでにない食味を有することから、新規性に富む大豆製品への利用が期待されます。
背景とねらい
最近、大豆加工食品のなかでも豆乳は消費量が急速に増大しています。しかし、豆乳では、大豆特有の青臭みやえぐ味を感じやすく、嗜好性を低下させており、これらの原因となる成分を低減した品種の開発が切望されていました。そこで、青臭みの原因であるリポキシゲナーゼを無くし、強いえぐ味を呈するグループAアセチルサポニンを欠失した大豆品種を育成しました。
成果の内容・特徴
- 「きぬさやか」は、1993年に、青臭みの原因であるリポキシゲナーゼを全て欠失した「刈系508号」を母に、強いえぐ味を呈するグループAアセチルサポニン欠失性の「刈交0459F1」(A-b(F)-A0/スズユタカ)を父として人工交配を行い、以後、選抜・固定を図り、育成した品種です(図1)。
- 成熟期は晩生の早で、収量は「スズユタカ」よりやや低く、子実は中粒で外観品質は「スズユタカ」並です(表1、写真1)。
- 子実中の全てのリポキシゲナーゼ(L-1、L-2、L-3)とグループAアセチルサポニンを欠失しています(図2)。
- 豆乳や豆腐(写真2)の加工適性は良好で、豆乳や豆腐は青臭みやえぐ味が少なく(図3)、豆乳はすっきりした味わいです。
- 病虫害抵抗性では、モザイクウイルス抵抗性が強、紫斑病と立枯れ性病害抵抗性はいずれもやや強、シストセンチュウ抵抗性は弱です(表2)。
- 花色が主要品種にはまれな白であり(写真3)、栽培時に他の子実収穫用品種との識別が容易です。
- 栽培適地は東北南部で、当初の普及見込み面積は300haです。
- 栽培上の注意点としては、リポキシゲナーゼ欠失等の子実成分の特性を損ねることのないよう、本品種単独の集団栽培を行うとともに、収穫・調整時に異品種が混入しないよう、純度管理を徹底することです。また、シストセンチュウ抵抗性が弱のため、連作やシストセンチュウ汚染圃場での栽培は避ける必要があります。
- 「きぬさやか」の名称は、豆乳、豆腐の食感が絹のようになめらかで、また、すっきりしてさわやかな味わいであることを表現しています。
- 本品種を原料とする大豆加工食品に関して、国内および米国での特許を取得しています。