日本短角種の牛肉を飼料自給により低コストに生産するため、1)輸入トウモロコシなどの濃厚飼料を原料とする 配合飼料の給与量の減量と2)配合飼料の代わりに地域産の濃厚飼料で肥育する方法を開発しました。この方法では、 1)配合飼料の給与量を慣行の60%程度まで減量しても、また2)配合飼料の代わりに地域産の濃厚飼料であるフス マとリンゴ絞り粕を給与しても、慣行の肥育と同等の枝肉を生産することができます。また、慣行の飼料費の70~80 %程度で済むため、地域産の濃厚飼料自給率の向上だけではなく、牛肉の低コスト生産も可能です。
背景とねらい
一般的に、肉牛は、肥育用の素牛に、濃厚飼料を原料とする配合飼料を多給する方法で肥育されます。ところが、 現在のわが国の濃厚飼料自給率はわずか10%と低いことから、農林水産省では平成27年度までに濃厚飼料自給率を 14%まで引き上げることを目標にしています。そこで、東北農業研究センターでは、主に北東北で飼育されている 日本短角種を、輸入トウモロコシなどの濃厚飼料を原料とする配合飼料に大きく依存しない方法で肥育するため、 岩手県生産技術体系「日本短角種肥育」の技術目標である650kgを目標体重とし、1)配合飼料の給与量の減量、 また2)配合飼料の代わりに地域産の濃厚飼料であるフスマとリンゴ絞り粕で肥育する方法を開発しました。
成果の内容・特徴
- 配合飼料の給与量を慣行の約60%に減量(配合飼料減量肥育)しても(図1)、地域で自給可能な牧草サイレージを飽食させれば、日本短角種の平均的な屠畜月齢である約24か月齢で目標体重に到達 させることができます(図2)。
- 配合飼料の代わりに、地域産の濃厚飼料であるフスマとリンゴ絞り粕を給与(地域産飼料肥育)しても (図1)、地域で自給可能な牧草サイレージを飽食させれば、約26か月齢で目標体重に到達 させることができます(図2)。
- 枝肉の重量は慣行の肥育に比べるとわずかに少ないですが、枝肉の格付け成績は慣行の肥育と同等のA-2 等級になります(図3、写真1)。
- 肥育に必要な飼料費は、慣行の肥育に比べて、「配合飼料減量肥育」で40千円(20%)少なく、「地域産飼料 肥育」で55千円(28%)少なくなります(図4)。
- 枝肉1kgの生産に必要な飼料費は、慣行の肥育に比べて、「配合飼料減量肥育」で79円(16%)少なく、「地域 産飼料肥育」で117円(23%)少なくなります(図5) 。
- 地域の安価な飼料資源を有効に活用することができるため、飼料自給率の向上および牛肉の低コスト生産が 可能です。