プレスリリース
夏秋どりイチゴの販売ターゲットと販売に向けた課題

情報公開日:2005年7月21日 (木曜日)

今日、夏秋期のイチゴ需要の大半は製菓用で、その多くが輸入物です。しかし、消費者の国産農産物志向を 背景に国産イチゴを望む洋菓子店は多く、夏秋期の国産イチゴは高値で取り引きされています。こうしたなか、 東北農業研究センターで開発された夏秋どりイチゴは、東北の夏季冷涼な気候を生かして生産できる国産イチゴ として、産地の大きな関心を集めています。そこで、夏秋どりイチゴの大きな需要が見込める東京都において全洋菓子店へのアンケート調査を行い、 販売ターゲットとしてどのような洋菓子店が考えられるか、それらの店へ販売する上でどのような課題があるかを 明らかにしました。これらの情報は、夏秋どりイチゴの効果的なマーケティングや産地づくりをすすめる上で 役立つものと期待されます。

背景とねらい

国産イチゴは安全性が高くおいしいというイメージが定着しており、洋菓子店の強い支持を受けています。しかし、夏秋期には品薄であることや高価格であることから、夏秋期における洋菓子店の需要は必ずしも満たされてはいません。現在、夏秋どりイチゴは、輸入物に替わる「高品質の国産イチゴ」として期待されているものの、今のところ大量生産が難しいこともあり、輸入イチゴより高価格になることが予想されます。そこで、この点を踏まえて「高品質の国産イチゴ」という特徴に対応した販売戦略を立てるため、夏秋どりイチゴの販売ターゲットと販売上の課題を検討しました。

成果の内容・特徴

  • 東京都の洋菓子店は次の三つに分類できます。規模が大きく、高価格ながらも品揃えが豊富な「大規模高級店型」、地元客に手ごろな価格でスタンダードな種類の洋菓子を提供している「地元密着店型」、独自の経営コンセプトで固定客を確保している「こだわり店型」です(表)。各タイプに応じた販売対応が求められます。
  • 「大規模高級店型」「こだわり店型」では、夏秋期の国産イチゴの購入店や高価格でも「安全・安心な果物」「おいしい果物」を購入したいとする店の割合、イチゴの「味」や「鮮度」など品質に対する重視度が高くなっています(図1、図2)。洋菓子業界では、国産は品質がよいというイメージが強いため、これらの店は有望な販売ターゲットといえます。
  • 「大規模高級店型」の店は、仲卸から夏秋期に大量のイチゴを購入しているのに対し、「こだわり店型」の店は、消費量が少ないためスーパーや小売店から購入する店も多くなっています(図3、図4)。したがって、「大規模高級店型」に売り込むには、一定量を安定供給する体制を整備することによって、仲卸に夏秋どりイチゴを取り扱ってもらうことが必要になります。また、「こだわり店型」に売り込むには、新鮮なイチゴを少量から供給できる体制を整備することが重要です。このように、販売ターゲットとそのターゲットに応じた販売体制を整備することによって、より効果的なマーケティングを行うことが可能になります。

詳細情報

表 類型別の洋菓子店の特徴

図1 国産イチゴの購入と果物の購入意向

図2 イチゴの条件の重視度

図3 夏秋期におけるイチゴの購入量

図4 イチゴの主な仕入先