除草剤抵抗性の発生が問題となっている水田雑草について、少量の葉を用いて数日間で抵抗性の有無を診断する方法を開発しました。この方法は従来の方法より幅広い草種で明瞭な結果を得ることができ、多数の試料を短期間で診断することができます。抵抗性雑草の発生実態や今後の発生動向を解明していく上で、現場での分布調査や個体群動態研究などへの利用が期待されます。
背景とねらい
水稲作では一発処理剤と呼ばれる除草剤が広く用いられており、一発処理剤のほとんどはスルホニルウレア系除草剤を主成分として含んでいます。スルホニルウレア系除草剤は多くの種類の雑草を長期間にわたって防除することができるため、稲作農家の大半はこの除草剤を使って雑草防除を行っています。しかし、一発処理剤が広く普及し、スルホニルウレア系除草剤が続けて何年も使われたため、1990年代半ばからスルホニルウレア系除草剤に対して抵抗性をもつ雑草が蔓延する事例が増えてきました(図1)。スルホニルウレア系除草剤に抵抗性を示すタイプ(除草剤抵抗性バイオタイプ)は現在12種類の水田雑草に見つかっており(表1)、東北では少なくとも4割以上の市町村で確認されています(表2)。
抵抗性バイオタイプは除草剤の効く従来のタイプ(感受性バイオタイプ)と外見上では全く見分けが付きません。見分けようと除草剤を散布しても、効果が現れるまでには数週間を要します。そのため、短期間で簡易に抵抗性診断を行う方法が求められており、当研究センターでは1999年にアゼトウガラシ属水田雑草を対象とした迅速診断法を確立し、また、(財)日本植物調節剤研究協会でも発根法と呼ばれる簡易診断法を確立してきました。しかし、1999年以降にイヌホタルイやコナギといった水田の重要雑草でも抵抗性が見られるようになり、これらの草種で迅速に診断する方法が新たに必要となっていました。そこで、これらの雑草でも迅速な診断が可能となるよう、従来の迅速診断法を改良しました。
成果の内容・特徴
- 表3の今回改良した手順(表3)で抵抗性診断を行うと、アゼトウガラシ属水田雑草では従来法(1999年発表) より簡便な手順で、また明瞭な結果が得られ、イヌホタルイ及びコナギについてもでも明瞭な結果が得られます(図2)。
- 現場での簡易診断に使用される発根法(注)と比較すると、本法は短期間で多数の診断が可能である点に 優れています。従って本法は抵抗性バイオタイプの分布調査や個体群動態研究への活用が期待されます。
(注)
発根法は、根を切り取った生植物を除草剤入りの水耕液に入れ、根の再生(発根)が観察されれば抵抗性と診断する方法です。発根法では結果が出るまでに2~3週間を要しますが、本法は2日間で診断結果がでます。また、発根法では根が腐るのを防ぐために根の切り口をよく洗う必要がありますが、本法は植物の一部を切り取るだけなので、試料の採取も非常に効率よく行えます。