プレスリリース
植物バイオマスの高度利用のためのキノコ用遺伝子発現ベクターの開発

- 新たなプロジェクト研究への取り組み -

情報公開日:2005年5月25日 (水曜日)

独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構(理事長三輪睿太郎、つくば市)東北農業研究センター(所長氏原和人、盛岡市)は、稲わら等の植物バイオマスを高度に利用できるキノコ用遺伝子発現ベクターを開発しました。この技術の一層の発展を期して、独立行政法人日本学術振興会科学研究費交付金により、バイオマス変換能力を強化する技術の開発(平成17~19年度)を開始します。自然界に存在する植物性資源のうち、量が最も多い物質はセルロースです。セルロースは、セルラーゼという酵素で分解することでアルコール発酵原料のブドウ糖を生産することができるため、石油代替の重要なエネルギー資源の一つとされています。木材や草に含まれるセルロースは、『リグニン』という物質によって保護され、このリグニンはセルラーゼがセルロースを分解することを妨げるため、ブドウ糖を生産する上で障害となります。一方、キノコはリグニンを効率よく分解するという、他の生き物には見られない特殊な能力があります。これはキノコが強力なリグニン分解酵素を生産するためですが、キノコ自身は自らにとって必要最低限の量しかこの酵素を生産できません。

本研究では、遺伝子発現ベクターを用いて、キノコにリグニン分解酵素を多量に生産する技術を開発します。ベクターとはいわゆる遺伝子の「運び屋」で、今回開発したベクターは、キノコで遺伝子を高発現するプロモーターを組み込んでいるため、分解酵素遺伝子をキノコに導入することができ、遺伝子導入されたキノコは酵素を多量に生産するようになります。

図1~3