障害型冷害によって不稔が発生した飼料イネにおいても、牛に障害を及ぼす硝酸態窒素濃度は低い水準にとどまることがわかりました。よって、冷害の被害地域で栽培された飼料イネでも硝酸塩中毒の心配なく、牛に給与できます。
背景とねらい
記録的な冷夏となった2003年に、北海道や東北地方の太平洋側で栽培されたイネに不稔が多発しました。従来から飼料イネは硝酸態窒素濃度が低く、危険濃度に達することはないとされてきましたが、障害型冷害によって不稔が発生した飼料イネにおける硝酸態窒素濃度は明らかにされていませんでした。そこで、これらの飼料イネについて、不稔率の増加や窒素の多量施用条件が硝酸態窒素濃度に及ぼす影響を明らかにし、牛への給与の可能性を検討しました。
成果の内容・特徴
- 冷害を受けた飼料イネのうち、不稔が発生したものは硝酸態窒素濃度がやや上昇する傾向にありました。ただし、硝酸塩中毒の目安とされる2000ppm(乾物中)や妊娠牛に対して給与制限が必要とされる1000ppmと比べて、はるかに低い水準にあります(図1)。
- 窒素を10aあたり16kg~20kgと多量施用した条件下でも、不稔率の増加による硝酸態窒素濃度の上昇はあるものの、低い水準にとどまっています(図2)。
- 岩手県北部の冷害の被害を受けた地域の農家水田において栽培された飼料イネの硝酸態窒素濃度を調査したところ、不稔率にかかわらず、いずれも低い範囲にあることがわかりました(図3)。
図1 冷害による不稔率の増加が飼料イネの硝酸態窒素濃度に及ぼす影響
図2 窒素多量施用条件下における飼料イネの不稔率と硝酸態窒素濃度との関係
図3 被害地域の農家圃場で栽培された飼料イネの不稔率と硝酸態窒素濃度との関係
本資料は、筑波研究学園都市記者会、農政記者クラブ、農林記者会にも配布しております。