新品種育成の背景・経緯
米の消費が減少する中で、中食・外食産業向けの業務用米の需要は増加しています。低価格の業務用米を生産するためには、直播栽培・減農薬栽培等の低コスト栽培に取り組む必要があり、実需者・生産者からも低コスト栽培が可能な良食味品種が求められていました。このような背景の中で、東北農業研究センターで育成した直播向き多収・良食味品種「萌えみのり」1)は、業務用米を中心に普及が進み、直播栽培による低コスト化への取り組み事例も増えてきています。しかし、「萌えみのり」はいもち病に強くないため、いもち病常発地域では栽培が難しいという問題がありました。そこで、いもち病抵抗性を改良した直播向き品種の育成を目的として、いもち病抵抗性"極強"の「中部111号(みねはるか)」に、「萌えみのり」を交配し、新品種「えみのあき」を育成しました。
「えみのあき」の特徴
- いもち病に強く、短稈で倒れにくい、直播栽培に適した品種です(図1、表1)。東北・北陸地域での直播栽培に適しているほか、いもち病常発地域での移植栽培にも適しています。
- 「萌えみのり」よりもいもち病に強く、葉いもち・穂いもちともに既存の"極強"の基準品種と同等のいもち病抵抗性を示します(図2)。また、耐冷性にも優れ、"強"に分類されます。
- 食味は東北地域の主要品種である「あきたこまち」「ひとめぼれ」と同等の良食味です。
- 出穂期・成熟期は「ひとめぼれ」並で、東北地域では"中生の晩"熟期です。精玄米収量は直播栽培では「ひとめぼれ」より多収で、移植栽培では「ひとめぼれ」と同程度です。「萌えみのり」には直播栽培、移植栽培ともに収量がやや劣ります。
- 玄米の千粒重は「ひとめぼれ」と同程度かやや重く、外観品質は「ひとめぼれ」並の良質です(表1)。
- 縞葉枯病にはかかりやすいので、常発地帯での栽培は避けてください。
品種の名前の由来
栽培しやすく美味しい品種として、生産者、消費者ともに笑顔になることを願って「えみのあき」と命名されました。
今後の予定・期待
現在、新潟県および秋田県の一部産地で試験栽培が行われています。このうち、新潟県では平成26年に5haの作付けが見込まれています。今後、これらの地域における低コスト良食味米の安定生産に貢献することが期待されます。
種子の入手に関するお問い合わせ先
農研機構 東北農業研究センター 企画管理部 業務推進室 運営チーム
Tel:019-643-3443 Fax:019-641-7794
利用許諾契約に関するお問い合わせ先
農研機構 連携普及部 知財・連携調整課 種苗係
Tel:029-838-7390 Fax:029-838-8905
用語の解説
1)萌えみのり
農研機構東北農業研究センターが2006年に育成した中生の晩熟期の良食味品種。短稈で倒れにくく直播栽培に適します。移植栽培、直播栽培のいずれにおいても安定多収の良食味品種として、秋田、岩手、宮城、新潟、茨城の各県で産地品種銘柄に指定されています。平成23年の栽培面積は300ha程度で、現在も栽培面積は拡大しています。
