新品種育成の背景・経緯
東北地域北部(特に岩手県)の大豆産地では、「ナンブシロメ」や「スズカリ」が主力品種として作付されています。しかし、「ナンブシロメ」は収量が低く、年次変動も大きくて不安定であることから収量の多い品種への切り替えが望まれており、また、「スズカリ」は豆腐などの加工適性が劣ることから実需者が利用しやすい特性を持つ品種の育成が求められていました。そこで、農研機構では、東北地域北部での栽培に適し、豆腐などの加工適性に優れ、耐病性と機械化適性を有する品種を育成することを目的として、極大粒の「東北143号」に、蛋白質含有率が高くダイズモザイク病に強い「刈系675号」を交配し、新品種「シュウリュウ」を育成しました。
「シュウリュウ」の特徴
- 「ナンブシロメ」や「スズカリ」と比べて耐病性に優れ、ダイズモザイク病や紫斑病に対して強い抵抗性を示します(表1)。
- 耐倒伏性が強く、最下着莢節位高3)も適正範囲にあり、コンバイン収穫に適します(表2、図1)。
- 子実が白目で「ナンブシロメ」や「スズカリ」より大きく、蛋白質含有率が「スズカリ」より高く「ナンブシロメ」並で、豆腐などの加工に適します(表2、図2)。
- 成熟期が中生の早で、収量が「ナンブシロメ」より多く「スズカリ」と同程度です(表2)。
- 栽培適地は、主に東北地域北部です。
- ダイズシストセンチュウ4)に弱いので、センチュウ被害の発生した圃場での栽培は避けてください。また、茎葉処理型除草剤(ベンタゾン)に対する感受性が高いので、薬害の発生に注意する必要があります。
品種の名前の由来
倒伏に強く、品質が秀でた大豆を秋に無事収穫できることを願って、「シュウリュウ」と命名されました。
今後の予定・期待
岩手県において主力品種の「ナンブシロメ」の一部と「スズカリ」のすべてを置き換える奨励品種として採用される予定であり、今後、この地域の大豆の安定生産に貢献することが期待されます。
種子の入手に関するお問い合わせ先
農研機構 東北農業研究センター 企画管理部 業務推進室 運営チーム
Tel:019-643-3443 Fax:019-641-7794
利用許諾契約に関するお問い合わせ先
農研機構 連携普及部 知財・連携調整課 種苗係
Tel:029-838-7390 Fax:029-838-8905
用語の解説
1) ダイズモザイク病
主にダイズモザイクウイルスによって発生し、発症すると若い葉の脈が透け、のちにモザイクとなり、縮葉症状を示し、種子には褐斑粒を生じ、収量と品質の低下をもたらします。
2) 成熟期の早晩性(そうばんせい)
作物の生育期間の長短を表します。収穫に至る期間が早い、中間、遅い品種を、各々、早生(わせ)、中生(なかて、ちゅうせい)、晩生(おくて、ばんせい)といいます。中生の早は、中生のなかでも早く収穫できる品種のことです。
3) 最下着莢節位高(さいかちゃっきょうせついこう)
大豆の子葉節から最下着莢節位までの高さを示します(図1)。これが高いとコンバイン収穫時の刈残し損失が少なくなります。地表面から10cm以上であることが求められています。
4) ダイズシストセンチュウ
大豆の植物体に寄生し、根の機能を損なうとともに、根粒菌の着生を阻害し、大きな減収をもたらします。