新品種育成の背景・経緯
米の消費量が減少する中で、国産への安心感等の理由から米菓の原料などの加工用モチ米については、国産品に対する安定した需要があります。また、転作作物として加工用モチ米に積極的に取り組む産地も増えています。加工用米については契約数量を確保する必要があることから、産地からは収量を安定させるために病虫害や倒伏に強いモチ品種が求められています。そこで、農研機構では、2004年に、良質のモチ米系統「奥羽糯391号」を母、直播用・良食味のウルチ米系統「奥羽直376号」を父として交配を行い、新品種「ときめきもち」を育成しました。なお、育成期間を短縮するために、2005年に国際農林水産業研究センター沖縄支所(現 熱帯・島嶼研究拠点)で、一年間に二作の世代促進栽培を行いました。
「ときめきもち」の特徴
- 稈長は短稈の「きぬのはだ」1)よりやや短く、移植でも直播でも安定して倒れにくい品種です(図1、表1、表2)。このため、直播栽培によるモチ米の省力・低コスト栽培にも適しています。
- イネの最大の病害である、いもち病に強い品種です(図2)。
- 収量は、多収の「きぬのはだ」と同程度で「ヒメノモチ」2)よりも多収です(表1)。
- 出穂期、成熟期は「きぬのはだ」並の"中生"です(表1)。
- よく見ると籾の先端が褐色なので、「あきたこまち」等のウルチ米品種の籾と区別できます(図3)。
- 玄米の外観品質は「きぬのはだ」並です(表1、図3)。餅はのびが良く、良食味の「ヒメノモチ」より食味が良いです(表3)。また、餅は時間をおいても硬くなりにくい特徴があります。
- 耐冷性は、やや強い程度です。「ひとめぼれ」よりは弱いので、冷害常発地帯での栽培は避けてください。栽培適地は東北中部以南です。
品種の名前の由来
栽培しやすく、おいしいモチ米に心ときめくようにとの願いがこめられています。
今後の予定・期待
秋田県内の一部産地で、米菓の原料に用いる加工用モチ米としての作付けを計画しています。当面は500haの作付けが見込まれています。栽培しやすく収量を確保しやすいため、加工用・餅用のモチ米の安定生産への貢献が期待されています。
種子の入手に関するお問い合わせ先
農研機構東北農業研究センター 企画管理部 業務推進室 運営チーム
Tel:019-643-3443 Fax:019-641-7794
利用許諾契約に関するお問い合わせ先
農研機構 連携普及部 知財・連携調整課 種苗係
Tel:029-838-7390 Fax:029-838-8905
用語の解説
1) きぬのはだ
1993年に秋田県農業試験場で育成されたモチ品種です。短稈で倒伏に強く多収の品種です。いもち病抵抗性は中程度です。
2) ヒメノモチ
1972年に東北農業試験場(現、農研機構東北農業研究センター)で育成されたモチ品種です。倒伏にはあまり強くありませんが、いもち病に強い品種です。餅ののびが良く良食味で、東北地方から中国地方まで広い範囲で栽培されているモチの主要品種です。
