プレスリリース
「おすそわけ袋」の活用方法等をマニュアルとして公表

- 贈答用果物の顧客拡大プロセスに基づく新たな販売戦略 -

情報公開日:2015年11月 6日 (金曜日)

ポイント

  • 消費者への直接販売を行う果樹生産者にとって、消費者間で行われる贈答やおすそわけは、新規の顧客を獲得する大きなチャンスとなることが顧客拡大プロセスの分析から明らかになりました。
  • 消費者への直接販売を行う果樹生産者が新規の顧客を獲得するためのツールとして「おすそわけ袋」を考案し、この度、活用方法等をとりまとめたマニュアル (冊子) を公表しました。

概要

  1. 農研機構は、「おすそわけ袋」 (写真1) を用いた贈答用果物の新たな販売戦略について、「『おすそわけ袋』の活用 -贈答用果物の直接販売を行う生産者のための新規顧客獲得方策- 」 (写真2) としてとりまとめ、公表しました。
  2. 贈答用リンゴの顧客拡大プロセスを分析したところ、贈答やおすそわけなど消費者間で行われる商品の授受には試食つきのクチコミ効果があり、消費者への直接販売を行う果樹生産者にとって、新規の顧客を獲得する大きなチャンスとなることがわかりました (図1) 。
  3. おすそわけ先の消費者と生産者をつなぐために、「おすそわけ袋」を考案しました。「おすそわけ袋」は消費者への直接販売を行う果樹生産者が、新規の顧客を獲得するツールとして活用できます。
  4. 本マニュアルには、家計における贈答用果物の位置づけ、リンゴ生産地の消費者行動、顧客拡大のプロセス、「おすそわけ袋」の導入・作成費用・評価と効果等を記載しています。

マニュアルの入手方法

農研機構のホームページ (「おすそわけ袋」の活用) からダウンロードしてご利用ください。

なお、冊子体をご希望の方は東北農業研究センター情報広報課へFaxまたはe-mailでお申し込みください。

Fax:019-643-3588 / e-mail:www-tohoku@@naro.affrc.go.jp
(このメールアドレスはコピー&ペースト後に@を一つ削除してから使用してください)

関連情報

予算:
運営費交付金
科学研究費助成事業 (学術研究助成基金助成金、基盤研究C、課題番号24580336、平成24~26年度)

詳細情報

背景・経緯

近年、宅配便等を利用して消費者に直接販売する果樹生産者が増加の傾向にあります。消費者への直接販売は市場出荷に比較して有利な販売価格を設定することが可能です。特に、贈答用は品質の高いものが求められるので、高価格販売による高収益を期待することができます。

贈答用果物は果物生産地の地元消費者が中元・歳暮などで利用することが多いので、まずは地元消費者が中心的な販売ターゲットとなります。しかし、更なる販路拡大を図る上で、地元以外の消費者にも顧客を広げることが重要です。 消費者への直接販売に先進的に取り組む果樹生産者は、直売所の設置やインターネットホームページの開設、ダイレクトメールの発送など顧客獲得のための様々な取組をしていますが、いかにして新たな顧客を発見し獲得していくかが大きな課題となっています。

そこで、贈答用リンゴを事例とし、消費者を対象としたアンケート調査を行って、消費者のニーズや購買行動に基づく新たな顧客獲得方法について検討しました。

内容・意義

  1. 贈答用リンゴの顧客拡大効果
    1. 消費者を対象としたアンケート調査の結果から、生産者が直接販売する場合の、贈答用リンゴの顧客拡大プロセスを明らかにしました (図1) 。
    2. まず、リンゴ生産地以外の消費者が生産者から直接リンゴを購入するようになる一番のきっかけは、「他の人からいただいたリンゴが気に入った」ことであることがわかりました。また、リンゴを贈答された消費者の半数以上が、自分でも同じ生産者からリンゴを購入したいと回答しています。
    3. さらに、ほとんどの消費者に「おすそわけ」の習慣があることがわかりました。リンゴは贈答された人だけでなく、その友人や隣人など周辺の消費者にも広がることになり、それらの人が新たな顧客となる可能性があります。
    4. つまり、贈答やおすそわけなど消費者間で行われる商品の授受には試食つきのクチコミ効果があり、消費者への直接販売を行う果樹生産者にとって、新規の顧客を獲得する大きなチャンスとなることがわかりました。
  2. 「おすそわけ袋」の考案と活用
    1. このような効果を有効に活用し、おすそわけ先の消費者と生産者をつなぐために、「おすそわけ袋」を考案しました。「おすそわけ袋」のおもて面には商品をイメージするデザインが、うら面には商品の特徴や生産者の連絡先などの情報が記載されています (写真1) 。
    2. 「おすそわけ袋」は、直接販売を行う果樹生産者がリンゴの箱に同梱し発送することで消費者の手元に届けられます (図2) 。リンゴを受け取った消費者は、おすそわけをする時の小分け用袋として利用します。
    3. 「おすそわけ袋」を用いると、これまで生産者とは接点の無いおすそわけ先の消費者にも商品に関する情報が確実に伝わります。おすそわけをされた消費者は、実際にリンゴを食べて味を確認し、自分でも購入したいと考えた時には、生産者に直接注文することが可能となります。「美味しいリンゴがほしいが、どこで手に入るかわからない」という消費者にとって、「おすそわけ袋」が良い情報源になります。
    4. 「おすそわけ袋」を同梱した販売実験を行ったところ、おすそわけをした消費者の8割以上が「おすそわけ袋」を利用しました (図3) 。さらに、「おすそわけ袋」は、おすそわけ先の消費者に商品情報を伝達し購買意欲を喚起させる効果があることを確認しました。また、実際に生産者のもとに「おすそわけ袋」を見たという消費者からの注文が寄せられています (表1) 。「おすそわけ袋」は消費者への直接販売を行う果樹生産者が、新たな顧客を獲得するツールとして活用できます。
    5. 消費者への直接販売を行う果樹生産者が「おすそわけ袋」を活用して新たな顧客拡大を図る方法を「『おすそわけ袋』の活用-贈答用果物の直接販売を行う生産者のための新規顧客獲得方策-」としてとりまとめ、公表しました(写真2)。本冊子には、家計における贈答用果物の位置づけ、リンゴ生産地の消費者行動、顧客拡大のプロセス、「おすそわけ袋」の導入・作成費用・評価と効果等を記載しています。

今後の予定・期待

  1. 様々な導入形態

    現在、「おすそわけ袋」は東北地域において、2つのリンゴ作経営体における導入が確認されており、4経営体において試験導入が図られています。「おすそわけ袋」は個々の生産者が単独で導入するだけでなく、複数の生産者で共通の袋を導入する形態も考えられます。今後、地域の仲間で共通のブランドを立ち上げる場合や、自治体が特産果物の産地ブランド化を進める場合への活用が期待されます (青森県において2自治体が試験導入) 。

  2. 他の果物への応用

    リンゴ以外にも、贈答用果物でおすそわけが頻繁に行われています。それぞれの果物に適した「おすそわけ袋」の形態、サイズ等を明らかにし、活用することによって、国産果物全体の消費拡大につながることが期待されます。

写真と図表

図1

図2

図3

表1

写真1

写真2