新品種育成の背景・経緯
南米原産のヤーコンが我が国に導入されてから約25年が経ちます。ヤーコンはサラダ等の生食だけでなく煮物や揚げ物等の食材としての有用性や高い健康機能性があるにもかかわらず、広域での栽培普及には至っていません。その理由として、原産地と大きく異なる気候条件には適応しにくいことや、品種の「品揃え」の不足が考えられます。
近畿中国四国農業センターでは、これまでに「サラダオトメ」、「アンデスの雪」、「サラダオカメ」の3品種を発表し、導入当初の系統に代わって栽培が広がってきています。そこで、一層のヤーコンの普及を目指して形質の多様性、収量性の向上を目標に育種に取り組みました。
「アンデスの乙女」は、日本初のヤーコン品種「サラダオトメ」と国際バレイショセンターから導入した「SY107」を交配した後代(「97C5-56」)に、さらにペルーから導入した「SY11」を交配し、その後、選抜と自殖を繰り返して育成した品種です。平成23年3月に品種登録出願を行いました(品種出願登録番号:第25733号)。
新品種「アンデスの乙女」の特徴
- 「アンデスの乙女」は、収穫直後のイモ表皮が既存品種にない鮮やかな赤紫色を呈します(図1)。
- 「アンデスの乙女」は、これまでの品種と比較して生育が旺盛です(表1)。
- 「アンデスの乙女」は、これまでの3品種と比較して、1株あたりの塊根数、塊根重が優ることから高い収量が得られます。また、裂根率が極めて低く、高品質のイモを収穫できます。また、可食部の甘味は「サラダオトメ」とほぼ同等です(表2)。

図1.「アンデスの乙女」収穫物の形状

品種の名前の由来
ヤーコンが南米原産であることを「アンデス」で、育成母本として「サラダオトメ」を使用したこと、外皮色の鮮やかな赤紫色の若々しいイメージを「乙女」で表現しました。
種イモの配布と取り扱い
栽培・増殖をご希望される方は、農研機構と利用許諾契約する必要があります。
利用許諾契約に関するお問い合わせ先
独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構
連携普及部 知財・連携調整課 種苗係
Tel 029-838-7390 Fax 029-838-8905
用語の解説
塊根
地下部に形成されるヤーコンの可食部であり、サツマイモのような形状をしています。ヤーコンイモとも言います。なお、芽は、根ショウガのような塊茎部分から出るので、塊根を植えても芽は出ません。繁殖には芽を含む塊茎部分を10g程度の大きさに切り分けて用います。

裂根率
表面に亀裂の入ったヤーコンイモでは商品価値が低下します。裂根率とは、収穫したヤーコンイモのうち亀裂の入ったものの割合を示します。
Brix(ブリックス)
溶液中の糖含量を表す単位で溶液の屈折率で示します。100gの溶液に10gの糖が溶けている場合には、Brix10%となります。