新品種育成の背景・経緯
国内では年間約50 万t の味噌が生産されており、その原料大豆の約9割が輸入品です。一方、世界的な大豆需要の増大による国際価格の上昇、消費者の食に対する安全・安心志向や地産地消への意識の高まりから、実需者の国産大豆に対する潜在的ニーズはあるものの、原料の安定供給等の課題から国産大豆の使用は限定的です。
近畿・中国・四国地域では白味噌・淡色味噌の生産および消費が多いものの、原料に好適な品種は限られています。また、本地域で発生するダイズモザイク病(病原はダイズモザイクウイルスA2 系統)による減収や品質低下を回避するには、抵抗性品種の導入が不可欠です。そこで、味噌への国産大豆使用拡大を目指し、淡色味噌に適した温暖地向けの安定生産・高加工適性品種を開発しました。現在のところ、広島県において奨励品種採用に向けた取り組みが進められています。
新品種「あきまろ」の特徴
「あきまろ」は、難裂莢性でダイズモザイク病に強い「東山系T683」を母、ダイズモザイク病に強く草姿の良い「東山系T762」を父とする交配組合せから育成されました。「あきまろ」は成熟期が「フクユタカ」と同程度の晩生種で、晩播栽培において「フクユタカ」より平均4%多収です(表1、図1)。最下着莢節位高が高いため、コンバイン収穫時の土混入による汚粒発生を軽減できます(表1、写真1)。ダイズモザイク病の病原の1つであるダイズモザイクウイルスA2 系統に対して抵抗性を持っており、本病による減収や障害粒発生を防ぎます(表1)。子実の外観品質が優れており(表1、写真2)、淡色味噌への加工適性について、色の明るさ、照り等の色調、味の官能評価が良好で、現行の標準品種「トヨコマチ」と比較して同等以上との評価が得られています(表1、写真3)。これらの特性を持つ「あきまろ」は、本地域の大豆作の収量や品質を向上させ、地域の大豆作拡大や農業振興に貢献することが期待されます。





品種の名前の由来
秋にまろやかで美味しい味噌の原料になる大豆が収穫できることを期待して名付けられました。
種苗の配布と取り扱い
「あきまろ」
平成23年4月27日に品種登録出願(品種登録出願番号:第25848号)を行いました。
平成23年10月7日に品種登録出願公表されました。
利用許諾契約に関するお問い合わせ先
農研機構 連携普及部 知財・連携調整課 種苗係
Tel:029-838-7390 Fax: 029-838-8905
用語の解説
淡色味噌
味噌は原料・味・色により分類されます。色の分類では、白・淡色・赤の3種類があります。近畿・中国・四国地域では、白味噌・淡色味噌の生産と消費が多いです。
最下着莢節位高
子葉節(一番下の節)~最下位の莢が着生した節までの高さのこと。最下着莢節位高が低すぎると、コンバインでの刈り取り位置を低くする必要があるため、コンバイン内に土が混入しやすくなります。コンバインに取り込まれた土は、子実の汚粒の発生原因になります。
ダイズモザイク病
発病すると、葉にモザイク状の病斑を生じ、株や葉が萎縮するため、生育が劣り、収量が低下します。また、収穫された大豆の子実には、褐色や黒色のしみが付くため、商品価値を著しく損ないます。ダイズモザイク病の原因となるウイルスは複数存在し、このうちダイズモザイクウイルスは、日本では本州以南で発生が確認されています。近畿・中国・四国地域では、主にA、B、A2 の3つのウイルス系統が分布しています。