「旬」の話題

米カレンダーは語る

米カレンダー(2014年版、以下同じ。)
1月写真「大磯の左義長」(撮影:小澤宏之)

水田は文化と環境を守る。このことを人々に伝えるために制作され続けているカレンダーがあります。「富山和子がつくる-日本の米カレンダー」。2014年版で創刊25周年を迎えます。
環境問題の評論家として知られ、「日本のレイチェル・カーソン」とも呼ばれる富山さん。水環境問題に取り組むうちに、農林水産業、特に稲作が日本の文化と環境の土台であると考えるようになり、精力的にその信念を広げました。今は農林水産業の多面的機能、棚田の重要性などが一般に認識されつつありますが、富山さんはその先駆者です。また、米カレンダーはマスメディアでの紹介、学校教材での使用もあり、農林水産業の役割の認知度向上に役立っています。

米カレンダーの基調をなすのは、各月1枚の写真と富山さん自作の詩です。プロやアマチュアのカメラマンが撮影した数千枚から選ばれた写真は人々に農村風景の美しさと多様さを教えてくれます。そして添えられた詩を読む時、その風景が、自然の恩恵があるにせよ、農林水産業などに携わる人々の長年の営みにより創られ、支えられているものであることを知ります。25年間に撮りためられた300枚の写真には、日本人が創った日本の原風景があります。

米カレンダー 4月写真「越後平野」
(撮影:佐藤尚)

<米カレンダー4月の詩「越後平野」から抜粋>

信濃川と阿賀野川の氾濫原、越後平野は
泥田との死闘の平野
胸まで水につかる農作業
刈った稲を置くのも干すのも舟しかなく
底なし沼のその泥田を少しでも底上げすべく
信濃川の洪水から泥をすくっては田へ運ぶ
気の遠くなるような作業がつづく
機械による排水で現在の穀倉に変わったのは
戦後になってからだった
(途中略)
日本海を背に弥彦山に立つと
その壮絶な歴史が思い起こされ
日本の平野とは紛れもない
労働の産物だと改めて思う」

2014年版米カレンダーの各月のテーマは以下のとおりです。写真の背後にある何世代にもわたる人々の努力や未来に向けた願いに思いが至る時、その風景は鮮やかさを増し、心に染みいるのです。

米カレンダー 8月写真「相馬海岸」
(撮影:田中正秋)

1月
大磯の左義長(神奈川県大磯町)

2月
雪の棚田(兵庫県香美町)

3月
岩間沈下橋(高知県四万十市)

4月
越後平野(新潟県越後平野)

5月
讃岐平野(香川県丸亀市)

6月
北庄棚田(岡山県久米南町)

7月
北海道のカラマツ(北海道富良野市

8月
相馬海岸(福島県相馬市)

9月
ヨズクハデ(島根県大田市)

10月
はざかけに二重の虹(群馬県川湯村)

11月
燻炭焼(新潟県五泉市)

12月
かきもち(奈良県奈良市)

「食と農の科学館」日本の米カレンダー展 開催中

農研機構が運営する展示施設「食と農の科学館」では米カレンダー展を開催中です。近くに来られた際には是非お寄り下さい。

場所

食と農の科学館(茨城県つくば市観音台3-1-1)

期間

平成26年4月10日まで(開館:午前9時~午後4時、入館無料)

展示内容

  • 2014年版に使用されている写真と詩のパネル
  • 富山和子さん本人の朗読入り映像の上映(約20分、スクリーンに映写)
  • 1999年以降の米カレンダー(実物)、関連図書等

ご注意

「食と農の科学館」は設備更新のため今冬は館内暖房ができません。暖かい服装でお越し下さい。