国際活動

第2回NARO食と健康の国際シンポジウム開催報告

1. 会議名

第2回NARO食と健康の国際シンポジウム「食料安全保障と健康―先端技術によるフードシステム変革を目指して―」
NARO 2nd International Symposium on Food and Health "Global Food Security and Human Health: Toward Transforming the Food System with Advanced Technology"

2. 日時

2022(令和4)年12月12日(月曜日)14時00分~19時00分(日本時間)

3. 場所

オンライン開催(配信会場 : 農研機構食と農の科学館)

4. 主催・後援

農研機構(主催)、農林水産省、ワーヘニンゲン大学研究センター(WUR)、フランス国立農業・食料・環境研究所(INRAE)、オランダ王国大使館農務部・在日フランス大使館科学技術部(後援)

5. 参加者

参加登録者は22の国・地域等から1,175名(国内外内訳:国内83%、国外17%. セクター内訳:企業22%、教育・研究16%、行政19%、農研機構28%、個人その他15%.)
当日の参加者(日本語・英語チャンネル合計数) : 837名
アーカイブ配信(1月15日まで)視聴回数 : 726回

6. シンポジウムの概要

【開会】

農研機構 久間理事長から、経済発展と環境保全を両立させる「Society5.0」の実現にむけた研究は世界的な課題である「食料安全保障」問題を解決する糸口であること、また当シンポジウムにおける深い議論と今後の連携が、技術革新につながることを期待するという主催者挨拶があった。後援機関を代表して、Heimovaara総長(WUR)、Mauguin理事長(INRAE)および川合事務局長(農林水産技術会議事務局)から、農業・健康・環境分野での飛躍的なインスピレーションが国際交流によりうまれ、課題解決につながることを期待するという挨拶をいただいた。

【基調講演】

Maximo Torero Cullenチーフエコノミスト (FAO)、LOPEZ BLANCO Ana Patricia (European Commission)の2名の方から基調講演をいただいた。
① Cullen 氏(FAO)は、世界の約31億人は健康的な食生活を送る余裕がないこと、果物・野菜・タンパク質に富む食品など栄養に配慮した食料の生産へ投資を促し、飢餓や栄養絵不足の状況改善が必要であると述べた。
② Ana氏(European Commission)は、2030年までに達成すべき8つの目標を紹介し、問題解決に向けたEUの農業研究の枠組みを紹介した。特に、分野や地域を超えたメンバーが協働して革新的な解決法を見出そうとしている事例を紹介した。

【セッション】 「データを最大限活用し生産と環境を両立する食料生産システム」(セッションリーダー : NARO(農情研)/矢野昌裕シニアエグゼクティブリサーチャー)

本セッションでは、人口増加および気候変動で不確実性が増す食料生産を、ICT、ロボティクス、ビッグデータおよびAIを駆使した最先端技術によって、生産性と環境保全が両立するシステムに置き換える挑戦と成果について示された。討論では、閉鎖系で構築したモデルやシステムを開放系へ適応させ大規模化する際の問題点や工夫、現状で対応可能な範囲などを議論した。品種改良や生育予測における、多様なセンシング技術の活用について意見交換を行った。また、WUR-NAROの共同プロジェクトや、INRAEで行われているリビングラボ(農作物生産現場―研究の枠組み)の挑戦について紹介された。
講演者 : NARO(農情研)/村上則幸副センター長、WUR/ Rick van de Zedde氏、NARO(作物研)/石本政男所長、INRAE/ Véronique Bellon-Maurel氏

【セッション】 「健康な食を供給する持続的フードシステムの構築」(セッションリーダー : NARO(オランダ駐在研究員)/後藤研究管理役)

本セッションでは、人々に真に健康的な食事をいつでも提供できる持続的なフードシステムの構築のため、「食文化と健康」「グローバルワンヘルス」「フードロス削減」の視点からの取組とグローバル食品企業のチャレンジについてご講演があった。討論では、持続可能な方法で生産された商品を普及させる際の障壁や、健康成分や"美味しさ情報"の消費者への提供方法などについて紹介された。また、①セクター②ジェネレーション③思考法④微生物 などの「多様性の相互理解と協力」が、持続的フードシステムの構築には重要であるとの提言があった。
講演者 : WUR/ Ingeborg de Wolf氏、NARO(食品研)/小堀真珠子領域長、Thünen Institute / Felicitas Schneider氏、ヤクルト本社(株)/長南 治 氏

【閉会】

最後に農研機構 勝田理事により、問題意識の共有や食と健康のイノベーション実現のためのグローバルな取り組みにむけての協力の必要性や期待の言葉でシンポジウムは締めくくられた。

7. シンポジウムの評価

事後アンケート(115名が回答)では、参加した感想として、85%の回答者から「良い」と評価されました(「悪い」0%、「どちらでもない)14%)。

なお、「This symposium is good, comprehensive from soil and plant management, produce and food processing and marketing. It's just better if the study is deepened in each study. (このシンポジウムは、土壌・植物管理、農産物・食品加工、マーケティングまで包括的で良い。ただ、それぞれの研究で深化が図られればより良い)」、「Speakers provided valuable information relating to application of AI/IoT technology in agricultural research and development.(講演者は、農業研究開発におけるAI/IoT技術の応用に関連する貴重な情報を提供してくれた)」、「聴講者からの質疑応答の時間を設けて欲しかった」などのコメントが寄せられました。また、今後のシンポジウム開催への期待も多く寄せられました。

農研機構 久間理事長の開会挨拶
セッション(上)、セッション(下)の討論の様子