北海道農業研究センター

所長室

北海道から21世紀農業を先導する技術を

所長天野哲郎北海道農業研究センターのホームページにお立ち寄り頂き有り難うございます。

この4月1日に(独)農業・食品技術総合研究機構(農研機構)の北海道農業研究センター所長を拝命しました天野です。就任に当たりひとことご挨拶を申し上げたいと思いますが、先ずは今般の東日本大震災において被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。北海道農業研究センターも農研機構の一員として農業技術面での貢献を果たしていく所存です。

さて、私事ですが、1978年に北海道農業試験場畑作部(現北海道農業研究センター芽室研究拠点)に採用されました。以降、つくばや盛岡での勤務を挟みながら、これまでの研究生活の過半を北海道で過ごさせて頂きました。この間、実に多くの農家の皆さん、大学や道立の研究所や普及センター、JA等の関係機関の諸先輩から様々なご指導をいただきながら、今日まで研究に携わって参りました。私にとってはまさにホームグラウンドであり、また北海道で仕事ができることを大変嬉しく思うと同時に、大変身の引き締まる思いでおります。

【第3期中期計画の推進】

さて、この4月より農研機構は独法になって第3期目の中期目標期間に入りました。第3期では、これまでの問題解決型の研究推進を一層進めるため、研究課題の設計では、農研機構の研究所を横断したプロジェクト型の研究推進を徹底し、124のプロジェクトを全国で推進することしています。このうちの畑作や酪農の先導的生産システムの確立や、IT利用による大規模機械化営農の基盤技術開発、バレイショの周年安定供給技術、作物の耐冷性発現利用技術や生物機能を利用した施肥削減技術など8つのプロジェクトについては、北海道農業研究センターの研究者がプロジェクトリーダーを勤めながら、都合40余りのプロジェクトに参画して中期計画の研究目標を達成して参ります。
このような課題設計を横糸としますと、研究所には縦糸として、これらの研究課題推進を底支えするため、研究領域を配置することとしました。研究領域においては、中長期的な視点からの人材育成や、長期的な視点からの研究ニーズ把握や研究シーズ醸成、開発された技術や研究成果の普及の加速などを主たる任務とします。特に地域農業研究センターは、営農現場と密接に関わりながら研究を推進しますので、研究および技術開発の入り口・出口の部分に関して大きな責任をもつものと考えております。
北海道農業研究センターでは、水田作、酪農、寒地作物、生産環境、畑作という5つの研究領域を配置しております。それぞれの研究領域は、一定の専門性も勘案しながら、地域農業の主要課題に即して配置しており、様々なお問い合わせや連携に関する窓口にもなります。

【北海道から21世紀型農業を先導する技術を】

20世紀において農業は、近代科学を活用して大きく飛躍しました。その結果、先進国では1980年代以降食料需給が緩和され、めざましい経済成長を遂げたわが国では、食料が余るというような飽食の時代を迎えておりました。
しかし、21世紀に入り、世界人口が2050年には90億を超え、しかも新興諸国を中心に所得増による食生活の変貌も予想され、世界的に食料需給が逼迫してきております。2007年から2008年に掛けての食料価格の急騰と食糧不足を起因とする一部海外諸国における暴動は記憶に新しいところです。
また近代農業技術が依拠してきた化石資源の枯渇が懸念されるとともに、2007年に出されたIPCC第4次報告での温暖化現象の指摘等にみるように地球環境問題の顕在化が問われてきております。これらの地球規模の問題が今後深刻な食料問題、環境問題として、わが国に、さらには人類に立ち現れるのか否かは、今後の農業技術の開発にかかるところが大きいと考えます。
さらに、冒頭にも申し上げましたが、東日本大震災の発生により、いまわが国は、社会・経済に大きな打撃を受けております。今回の震災の影響は、わが国の根幹を揺るがすほどの大きなものであり、この経験を踏まえながら、農林水産業を含む新たな社会経済システムの構築が求められてくるものと考えられます。

このように21世紀に入り農業を取り巻く環境はダイナミックに変化をしてきております。このような中で、わが国農業の中で、特異的に大規模な専業的農業経営がテイクオフしてきたと言われる食糧供給基地としての北海道農業の重要性と、その発展を支える革新的な農業技術の重要性は従前にもまして高まっております。
このことに対し、わが国最大の農業技術開発機関である農研機構の組織である北海道農研センターは、先端的な研究を基盤に、これらの課題解決に寄与し得る技術を開発することをミッションとしております。このことを再認識しながら、具体的な北海道という場において、関係する皆さんと連携しながら、第3期の中期計画にそって、21世紀の農業を先導する技術開発を目指した、研究を押し進めて参ります。どうかこれまで以上のご指導・ご支援を賜りますようお願い申し上げ、就任のご挨拶に代えさせて頂きます。

平成23年4月20日
北海道農業研究センター 所長 天野哲郎