北海道農業研究センター

所長室

平成24年年頭の挨拶

所長天野哲郎謹んで初春のご挨拶を申し上げます。

昨年は千年に一度の大災害とも言われる東日本大震災の発生がありました。あらためて被災された方々にお見舞いを申し上げるとともに、農研機構の一員として、復興に向け支援していかなければならないと、思いを新たにしております。
このような国難とも言える状況の一方で、全世界的な経済危機が紙面を賑わせております。1985年のプラザ合意後の経済体制の潮流の転換が求められているものであり、しばらくは新たな均衡に向け紆余曲折が続くものと考えております。農業に関わることでいえばWTOのドーハラウンドの一括合意断念、TPPへの参加の協議開始等、わが国の農業、とりわけ北海道農業はかつてない状況にあると申して過言ではないかも知れません。

しかし、厳しい自然および社会環境下にあり、あるいはそうであったからこそ、わが国では唯一、構造改革を遂げ大規模機械化営農を築き上げてきたのが北海道農業です。そのことを実践してきた北海道の農家や関係者の皆さんの力で、10年後、20年後には世界の食料生産を支える農業を展開しているもの確信しております。

ただ、そのためには技術的な飛躍が不可欠です。今ほど地域農業を変革する先導的な技術の提案が求められている時代はないと思います。これこそがわれわれの北海道農業研究センターのミッションです。志を高く、そして大きな構想を描いてこの変革の時代に足跡を残していく所存です。

昨年を振り返れば、北海道農業研究センター育成の超強力小麦品種「ゆめちから」を大きく世の中で取り上げていただき、わが国の小麦生産を変える第一歩を踏み出しました。また、年末には農林水産省の「2011年農林水産研究成果10大トピックス」に 北海道大学との共同研究で実施している「ジャガイモの重大害虫シストセンチュウのふ化を促進する物質の化学合成に成功」を取り上げていただきました。

北農研ではこの他にも、水田の乾田直播技術体系、持続性の高い酪農生産技術体系、バレイショの新栽培技術体系の確立に取り組んでいます。また、先導的・基盤的な品種育成やその利用技術、生物機能を活用した環境制御技術、低温ストレスや気象変動の克服、大規模IT農業確立を始め、この北海道の地ならではの、そしてわが国農業の10年後、20年後までの基盤となる先導的で骨太の技術開発に取り組んでいます。「ゆめちから」に続き、研究所の英知を集め、着実にこれらの仕事を進めていきます。

そのため、国民の皆さんの信頼に応えられるよう、コンプライアンスを遵守しつつ、研究所が一体となってまい進して参ります。もちろんわれわれの力だけではミッションを達成することは容易ではありません。生産現場や関連企業の皆さん、行政を始め指導機関の皆さん、そして大学や試験研究機関の皆さんとの連携が不可欠ですので、引き続き、格段のご支援・ご指導をお願いし、年頭のあいさつとさせていただきます。

平成24年1月4日
独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構
北海道農業研究センター所長 天 野 哲 郎