農業機械研究部門

資料館

003 畜力原動機(傘型式)

写真

欧米においては19世紀のはじめから,脚踏式および回行式畜力原動機が利用されている.わが国においては古来からわずかに砂糖生産地の琉球や四国方面で,甘蔗の搾汁用輾車の運転に牛馬を利用している.ところが岡山県邑久郡豊村の奥山鹿吉は,世界に類をみない独特の傘型畜力原動機を発明(1902(明治35)年)した.

この原動機は,太い木製主軸を垂直に立て,これを中心に,上部に16~24本の腕木を傘型に張り出し,その先端をY字型とし,これに動力伝達用のロープをかける.傘の直径は3m内外であるが,大型になると6mぐらいのものもある.主軸のやや下方に普通長さ1.5~2.1mの曳木をつけ,これを牛馬にひかせて回行させる.傘からのロープで脱穀機や籾摺機を運転する.明治末期から次第に普及し,大正10年には岡山県下だけでも12,000台の普及をみた.

本機はこの木製傘型畜力原動機を,曳木のほかは全部鋼鉄製とし,ロープをチェーンにしたもので,愛知県農事試験場技師水野夏一が大正末期に試作したもの.