農業機械研究部門

資料館

052 洋犁の犁体

写真

『広部良其論』(広部達三)によれぱ,プラウのすきへら(英:Mouldboard,独:Streich-brett)は,曲面の形状から次の6種類に分類することができる.

  • (1)円板型
  • (2)ルカルド型
  • (3)クルツール型
  • (4)不完全ゲウンデネ型
  • (5)ゲウンデネ短形型
  • (6)ゲウンデネ長形型


以上を大きく分けると,(2)と(3)は円筒型,(4)(5)(6)は螺旋型に属する.

(1)円板型
円板型は,すきさきとすきへらが合体して皿状(円板状)となったもの.その周辺部はすきへらに相当し,これが回転によって耕土を切削反転する.円板は球または楕円体の一部で,曲面は凹状面をなしている.土塊は破砕されて進行方向に直角に放出される.アメリカで考案された比較的新しい型.

(2)ルカルド型
すきへらは円筒形の一部を採用したもので,ヘらの長さは比較的短く,肩部はやや円形をなしている.円筒軸は牽引方向と50~60度の偏角をなし,犁体(すきさきとすきへら)が耕盤となす傾角は,30度以上の急勾配.
この型は,主として砂質土,軽鬆土その他水分の少ない多孔質の壌土の耕起に適している.

(3)クルツール型
すきへらは凹形曲面をなし,ルカルド型と同じく円筒の一部をさい切した形態.しかし,円筒の径はルカルド型より大きい.へらの長さはルカルド型より長く,肩部は円形ではない.耕盤となす傾角は20~30度.また,円筒軸は牽引軸と約45~50度の偏角をなしている.本型は水分の多い壌質土に対して最適であるが,一般に土質のいかんを問わず広く使用され,クルツール型(耕作型)の名がある.

(4)不完全ゲウンデネ型
ルカルド型およびクルツール型と異なり,へらの曲度は一様でなく,凹凸曲面を有し螺旋型曲面に近い.すなわち,クルツール型とゲウンデネ型とを混用した形態で,円筒または円錐の軸を捻曲した曲面の一部とみることができる.へらの長さはゲウンデネ型に比較して短く,捻曲程度も小さい。円筒軸は牽引方向と約40度の偏角をなし,すきさきの尖点偏角は35度内外.本型は一般に粘質土に適し,アメリカの粘土用犁の多くはこの型で,一名アメリカ型とも呼ばれる.

(5)ゲウンデネ短形型
へらは規則正しい曲面であるが,不完全ゲウンデネ型と同様並行曲線でなく,螺旋面の一部を採用したもの.簡単なものは平面を捻転.すきさきの尖点偏角は30~40度.
本型を使用すると,整然とした方形のれき条となり,しかもれき面に亀裂を生ずることが少ない.また,れきの重心は,常に外の方に偏位するから抵抗力が少ない.螺旋面の歩みは短く,ヘらも短い.したがって,曲面の変化が急で,れきの反転が急激なため急転型とも呼ぱれる.また,ドイツ,オーストリア地方で粘質土用に広く使用されるため,ドイツ型とも呼ぱれる.

(6)ゲウンデネ長形型
イギリスのジェームススモールの考案したもので,先のゲウンデネ短形型と比較して,螺旋の歩みが長い.したがって,ヘらが長く,はゆるやかに反転するため,緩転犁とも呼ばれる.
使用の際は犁の進行速度毎秒1m以下にする必要がある.

以上の分類によって,資料館の犁体を鑑定すれば次のとおりになる.

52-1 ゲウンデネ長形型(ホークベら)(フランス)
52-2 クルツール型(フランス)
52-3 ゲウンデネ短形型(フランス)
52-4 ハルブゲウンデネ型(ドイツ)
52-5 ハルブゲウンデネ型(ドイツ)
52-6 クルツール型(ドイツ)
52-7 クルツール型(ドイツ)
52-8 ゲウンデネ短形型(フランス)
52-9 ハルブゲウンデネ型(ドイツ)
52-10 ゲウンデネ短形型(ドイツ)
52-11 ゲウンデネ短形型(ドイツ)
52-12 両へら犁(ドイツ)