農薬散布時のドリフトを大幅に低減するブームスプレーヤ用ノズル
- 慣行ノズルに比べてドリフトしやすい微細粒子を大幅に削減
- 既存の各種ブームスプレーヤに装着可能
- 薬液付着性能、作業能率は慣行ノズルでの作業と同等

1.利用のメリット
- 現在、農薬散布作業に使用されている各種ブームスプレーヤに装着することにより、ドリフト(農薬飛散)を慣行ノズルよりも大幅に低減しつつ、慣行と同等の薬液付着性能及び作業能率で散布作業を行うことができる。
2.開発機の概要
- 開発ノズル(I型及びII型)の常用圧力、噴霧量等は慣行ノズルとほぼ同等。
- 国産のトラクタ搭載式及び乗用管理機搭載式ブームスプレーヤに装着可能。
- I型(空気非混入式)は、噴霧平均粒径が慣行の約2倍、ドリフト要因となる100μm以下の微細粒子の割合が慣行の1/2~1/3程度であり、ドリフトを低減しつつも薬液の付着性能を重視。一方、II型(空気混入式)は、粒径が慣行の3~4倍、100μm以下の粒子割合が慣行の1/4~1/10程度と微細粒子を大幅に削減し、ドリフト低減効果を重視。
- 開発ノズルを慣行防除と同一条件(農薬の種類、希釈濃度、10a当たり散布量)で使用した場合、ドリフトを大幅に低減しつつ、ほぼ同程度の防除効果を確保。
ドリフト低減型及び慣行ノズルの噴霧状況
3.活用上の留意点
- ブームのノズル取り付け部の仕様が本ノズル(管用ネジSW13.8またはW20)に適合するか事前に確認する。仕様が異なる場合は異径継ぎ手等で対応する。
- ノズル装着後は噴霧圧力、噴霧量の確認を行い、10a当たり散布量等が所定の値となるようにブームスプレーヤの噴霧ポンプ吐出圧力、走行(作業)速度等を設定する。
- 本ノズルを使用する場合であっても、ドリフト発生の危険性が高い場面(強風下、あるいは、微風であっても散布地点から至近距離に別ほ場や作物がある場合等)では、散布経路や作業日程を変更する、シート等の遮蔽物を設置する等のドリフト防止への対応が不可欠である。
開発ノズルのドリフト低減効果
(試験事例)
4.共同研究実施会社
株式会社共立、株式会社丸山製作所、ヤマホ工業株式会社
5.主要諸元・構造
種類(噴板呼称) |
I型(φ0.8) |
II型(φ0.8) |
参考:慣行(φ1.3) |
装着可能散布機 |
トラクタまたは乗用管理機搭載式ブームスプレーヤ(ノズル取付間隔30cm) |
装着部の規格(管用ネジ) |
SW13.8またはW20 |
W20 |
噴霧形状 |
扇形 |
中空円錐形 |
噴霧角 (度) |
70 |
100 |
80 |
噴霧生成方式 |
空気非混入 |
空気混入 |
空気非混入 |
噴霧圧力(常用) (MPa) |
1.0~2.0 |
同左 |
噴霧量(常用) (L/min) |
1.0~1.4 |
0.9~1.3 |
0.8~1.2 |
粒径(体積中位径:VMD) (μm) |
110~180 |
240~330 |
60~80 |
100μm以下体積割合 (%) |
20~45 |
5~15 |
65~90 |
散布量(適応範囲) (L/10a) |
75(作業速度0.7m/s)~200(同0.3m/s) |
同左 |
6.作業性能
- 開発ノズルの常用圧力、噴霧量等は慣行ノズルとほぼ同等であり、既存のブームスプレーヤ(トラクタ搭載式及び乗用管理機搭載式)に装着して行ったほ場試験(キャベツ及び水稲ほ場)において、慣行と同等の付着性能及び作業能率が得られることを確認した。
- 噴霧平均粒径はI型で慣行ノズルの約2倍、II型で3~4倍程度、ドリフト要因となる粒径100μm以下粒子の体積合計割合はI型で慣行の1/2~1/3、II型で1/4~1/10程度となった。
- 乗用管理機装着時のほ場試験(水稲、散布量100L/10a)では、ほ場境界から距離3~20mにおけるドリフト指数(感水紙面への付着液斑被覆面積率に基づいた指数:0~10の11段階)において、I型で慣行の約1/2(追風2m/s時)、II型で約1/5(横風4m/s時)にドリフトを抑制できた。
- ブームスプレーヤ装着時のキャベツ殺虫剤防除効果試験では、慣行と同一条件(農薬の種類、希釈濃度、散布量)において概ね同程度の効果を確認した。
- (試験場所:北海道立中央農試、群馬高冷地野菜研究センター、生研センター及び同附属農場)