農業機械研究部門

緊プロ開発機のご紹介

高精度畑用中耕除草機

(2008年発表)

高水分な土壌でも、高速・高精度作業が可能

  • 高速作業が可能で、能率は従来機の1.5~2倍
  • 適期作業が容易で、雑草防除効果が高い
  • 高水分な土壌でも土を練りにくく、大豆の増収が期待できる

写真

1.利用のメリット

作業能率の向上により適期作業が容易になり、作業負担面積を拡大できる。また、適期作業の実現と土を反転させる作用により雑草防除効果が高い。さらに、高水分な土壌で作業しても、土を練り付けにくいことから大豆の増収が期待できる。

2.開発機の概要

  • 前後に設けられた2対のディスクが作物条間で回転し、土を横に反転移動することにより中耕除草や培土を行う(図1)畑用中耕除草機である。
  • 1.0~1.4m/s程度の高速作業が可能で、作業能率は従来機(ロータリ式中耕除草機)の1.5~2倍である。また、単位面積あたりの燃料消費量は従来機の半分程度である。
  • 土を反転させる作用があることから雑草防除性能が高く、従来機に比べ収穫前の雑草量(乾物重)を半分程度に減らす効果が期待できる(表1)。
  • 高水分な土壌でも、土の練り付けや圧縮が少なく、砕土が良好に行われる。そのため、このような土壌条件の場合には,従来機に比べ15%程度の大豆の増収効果が期待できる(表2)。

3.活用上の留意点

  • 作業時には、作物の株元まで精度良く培土できるように、作業速度や土壌条件に応じ、後列ディスクの角度を調節する。また、作物条間が変わっても、作物を挟んで対向する後列ディスクの間隔が一定になるように調節する。
  • 土が硬いために耕深が浅くなる時は、付属のチゼルを作用させる。

4.共同研究実施会社

井関農機株式会社小橋工業株式会社

5.主要諸元・構造

前後に設けられた2対のディスクが作物条間を通過する際に土壌抵抗により回転し、土を横に反転移動させることにより中耕除草及び培土を行う畑用中耕 除草機である。トラクタ用と乗用管理機用があり、前列に外周に切欠きのないディスクを、後列に切欠き付きの花型ディスクを取付けている。条間、作業速度及 び土壌条件に応じ、前・後列ディスクの角度や後列ディスクの横方向取付け位置を変更できるほか、土が硬い時に作用させるチゼルを有している。

環境保全型汎用薬液散布装置02

6.作業性能

  • 開発機は作業精度を維持しつつ、1.0~1.4m/s程度の高速作業が可能であった。長辺72mと198mの大豆栽培ほ場における開発機のほ場作業量は72~95a/hであり、標準的な速度0.5~0.6m/sで作業した従来機(ロータリ式中耕除草機)の1.7~1.9倍であった。また、開発機の単位面積あたり燃料消費量は、従来機の約半分であった。
  • 延べ14ほ場で試験した結果、開発機区の作業後(収穫前2カ月~1週間)の雑草量(乾物重)は、従来機で作業した区に比べ、平均で条間が約50%、株間が約40%少なかった。
  • 湿潤な土壌条件で作業した6ほ場の開発機区では、土の練り付けや圧縮が少なく、従来機区より平均土塊径が20%小さかった。それにより、従来機区に比べ、試作機区の作業後(収穫前2カ月~1週間)の土壌は固相率が5%低く、含水比が10%高いなど、膨軟で水分が維持された状態であった。そのため、これらのほ場における開発機区の大豆収量は従来機区より平均で15%多かった。

(試験場所:秋田県潟上市、新潟県農業総合研究所(2ほ場)、埼玉県熊谷市、生研センター)