農業機械研究部門

緊プロ開発機のご紹介

傾斜草地用多機能トラクター

(2000年発表)

傾斜草地での作業を安全にスイスイ

  • 超低重心設計により安定性抜群
  • 4つのかじ取り方式で優れた旋回性と作業性
  • 車体前後に作業機を装着し、多機能性を発揮

写真
開発機で採用した四種類のかじ取り方式

1.利用のメリット

傾斜草地における牧草の刈取り、施肥等の各種作業を安全にしかも効果的に行えるようになり、良質粗飼料の増産・確保に貢献。また、多機能性を生かして快適管理作業を実現。

2.開発機の概要

  • 44kW(60PS)ディーゼルエンジンを運転席横に搭載し、良好な前後視界を確保。低重心化により、静的横転倒角(実測)は42°以上。前後に各種作業機を装着でき、作業用途に応じて4種類のかじ取り方式(前輪かじ取り、後輪かじ取り、四輪かじ取り[同位相、逆位相])をスイッチで簡単にしかも確実に選択可能。
  • 走行部駆動に油圧式無段変速機構(HST)を採用。傾斜草地でも安全でスムースな走行が可能。
  • 付属作業機として前装ディスクモーア(刈幅:2.2m)、前装フレールモーア(刈幅:2.35m)、後装ブロードキャスタ(容量:600L)、前装荷役装置(アタッチメント:ベールグラブ、バケット)を開発。
  • 前後に三点リンクを持ち、市販テッダ・レーキや傾斜地用ロールベーラ(緊プロ開発機)など付属作業機以外の作業機を装着して収穫作業等を行うことも可能。
  • (試験場所:熊本県畜産開発公社・西原公共育成牧場、埼玉県秩父高原牧場、青森県肉用牛開発公社・酪農振興センターほか)

3.活用上の留意点

  • 傾斜草地での安全刈取り作業の目安は傾斜20°程度まで。
  • 付属荷役装置によるハンドリング可能質量は400kgが目安。

4.委託研究実施会社

ヤンマー農機株式会社株式会社タカキタ

付属ディスクモーアを装着したトラクターによる牧草の刈取り作業付属ディスクモーアを装着したトラクターによる牧草の刈取り作業

付属ブロードキャスタによる施肥作業付属ブロードキャスタによる施肥作業

ロールベールハンドリング作業ロールベールハンドリング作業

5.主要諸元・構造

1.トラクタ 2.作業機
載機関 44kW水冷ディーゼル
全 長(cm) 340
全 幅(cm) 202
全 高(cm) 214
全質量(t) 2.3
かじ取り方式 前輪、後輪、四輪
(同・逆位相)
作業機装着装置 前後三点リンク
1)モーア
形 式 ディスクフレール(掃除刈用)
装着位置 前 装
刈幅(m) 2.2 2.35
2)ブロードキャスタ
形 式 2軸スピンナ
装着位置 後 装
容量(L) 600
3)荷役装置
装着位置 前 装
アタッチメント ベールクラブ バケット

6.作業性能

  • エンジンを運転席横に配置し、車体の低重心化を図ることにより、良好な前後視界と高い安定性が確保ができた(通常のトラクタの静的横転倒角37°程度に対し、開発機では42°以上)。
  • 四輪かじ取り方式(逆位相)を選定した場合には最小旋回半径が2.8mとなり、20kW前後の通常のトラクタの旋回半径に相当する良好な旋回性が得られた。
  • 付属前装ディスクモーアを装着して収量約4t/10a(含水率80%換算)の草地で刈取り試験を実施した結果、1.7m/sの速度で順調な等高線方向の刈取り作業を行うことができた(平均傾斜 16°)。また、登降坂作業では約20°の斜面の刈取りを安全に行うことができた。なお、ディスクモーアに左右各150mmのスイング量を持たせることにより、旋回時も未刈取り草を踏み倒すことなく円滑な作業を行うことができた。
  • トラクタ後部三点リンクの水平制御機能を活用して付属ブロードキャスタで肥料散布することにより、傾斜地でも変動の少ない肥料散布を行うことができた。また、後部三点リンクに市販テッダ・レーキや傾斜地用ベーラ(緊プロ開発機)を装着して収穫作業を行うことも可能であった。
  • 試作荷役装置では呼び直径1mのロールベールラップサイロの効率的なハンドリングを行うことができた。
  • (試験場所:(社)熊本県畜産開発公社・西原公共育成牧場、奈良県畜産試験場、埼玉県秩父高原牧場、(社)青森県肉用牛開発公社・酪農振興センターほか)