食品研究部門

食品醸造微生物ユニット

役割

麹菌(こうじきん)は、味噌や醤油、漬物などの発酵食品を作るうえで重要な役割を担う糸状菌(カビ)の一種です。日本醸造学会では、麹菌の重要性から、本菌を国の菌、「国菌」と認定しました。食品醸造微生物ユニットでは、麹菌を中心とした発酵微生物の代謝物や酵素、遺伝子などに関する基礎的な研究をしています。当ユニットは、麹菌ゲノム解析コンソーシアムに参画し、麹菌のゲノム配列解読に成功しました。ゲノム情報の活用により、味や香りの良い菌株や、工業用酵素を多量に作る菌株の品種改良をスピードアップすることができます。研究成果は、麹菌の新しい菌株の育種や、品種改良の効率化にフィードバックされていきます。
また、味噌の品質と成分群、微生物の関係を解析して、品質の高い味噌の必要条件を明らかにし、メーカーや指導機関が利用可能な高品質味噌醸造技術として提供してまいります。
【写真】
糸状菌胞子の発芽時における核(青色)と胞子内蓄積タンパク質(緑色)の蛍光顕微鏡による観察

【写真】RIB1187株とRIB40株のシャーレ比較5パターン
麹菌光応答 麹菌は菌株によって光に対する応答の仕方が違う事がわかりました。光によって緑色の胞子がたくさん出来るRIB1187株と光によって胞子の付き方が悪くなるRIB40株があることがわかりました。

【画像】賛成ホスファターゼ訂正さん株の選択によるだし入り味噌の省エネルギー製造工程の提案
だし入り味噌製造に適した麹菌株を使うことにより、だし入り味噌の製造の加熱工程が不要となる、省エネルギー型だし入り味噌製造技術を開発しました。

主な研究テーマ

研究内容

麹菌ゲノム解析コンソーシアムの研究機関のひとつとして、ゲノム解析研究を行っています。麹菌の遺伝子を解析することにより、新しい有用な酵素を探索する ことが可能になります。これまで分類が非常に難しかった麹菌について、遺伝子の解析による分類などの研究に取り組んでいます。また、麹菌の発現遺伝子を網 羅的に解析する研究(EST解析)を行い、さらに麹菌の全ゲノム配列の解読に成功しました。また、糸状菌は多様な酵素を生産します。糸状菌のさまざまな酵素の特徴を解明し、酵素の利用に関する研究や、酵素の性質を変えて行くための基礎を作る研究をしています。
また、味噌の品質と成分群、微生物の関係について、研究を進めています。

研究課題と成果

  • 麹菌遺伝子の形質転換菌株や、食品等の多数の試料から遺伝子DNAを短時間で抽出し、PCR遺伝子増幅する方法を開発しました。糸状菌のコロニーPCR検出法を確立しました。
  • だし入り味噌のだし成分(核酸系調味料)を分解する麹菌の酵素(酸性ホスファターゼ)を共同で解明し、その制御機構を明らかにしました。現在は、だし成分が分解しないように味噌を高温で加熱処理をしてだし入り味噌を製造していますが、その加熱処理が不要になる省エネルギー型味噌製造技術の開発につながります。
  • 糸状菌の光応答に関する研究を実施しています。
  • 有害な二次代謝産物を産生する糸状菌の検出と制御に向けた研究を実施しています。

メンバー

ユニット長

楠本 憲一(くすもと けんいち)/専門:醸造微生物学

上級研究員

鈴木 聡 (すずき さとし) / 専門:分子生物学

研究員

服部 領太(はっとり りょうた)/専門:醸造微生物学

主要成果

こちらをご覧ください。