- 牛
- 鹿
- 馬
- めん羊・山羊
- 豚
- 鶏
- その他・家きん
- 蜜蜂
- その他・家畜


対象家畜牛、鹿、馬、めん羊、山羊
特徴

エンドファイト(内生菌)は植物と共生する真菌や細菌であり、植物の耐虫性や成長に有用な物質を作る。一方、イネ科牧草に感染する真菌エンドファイトは毒素を産生し、多量では家畜に中毒を起こし、北米、オーストラリア、ニュージーランドで問題になっている。日本でも、1990年代後半に、黒毛和種繁殖雌牛や育成牛でエンドファイト中毒が散発した。これは、北米でエンドファイトを利用して生産した芝草用品種から、種子を採取した残りのストローを、稲わら代替品として牛に使用した輸入ストロー(主にペレニアルライグラスとトールフェスク)が原因であった。現在では、輸入ストローの毒素の許容基準値が定められ、中毒事故は減少した。
ペレニアルライグラスに感染したエンドファイトはロリトレムBという毒素を産生し、牛に神経症状を起こす。頸部から脇腹にかけての筋肉の痙攣(けいれん)から始まり、運動失調、起立不能に至る。黒毛和種牛はロリトレムBに対する感受性が高いため注意が必要である。
また、トールフェスクに感染したエンドファイトは麦角アルカロイドのエルゴバリンという毒素を産生し、牛は夏季には、顕著な増体量の低下、唾液分泌の亢進、体温・呼吸数の上昇、受胎成績の悪化、泌乳量の減少等の症状を、冬季には、耳や尾の先、ひづめ等に壊疽(えそ=組織や細胞が死ぬこと)を起こす。
対策
輸入ストローは毒素の濃度が基準値以下であることを確認し、単味の使用はなるべく避ける等、「輸入ストローの安全な使い方のパンフレット」に従って給与することが大事である。牛に痙攣などの異常が観察された場合にはただちに当該輸入ストローの給与を停止し、家畜保健衛生所に連絡する。
[写真:ロリトレムBによる中毒で起立不能になった子牛(沖縄県提供)]
動物衛生研究部門 : 吉岡都
参考情報
情報公開日 : 2015年10月14日