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小型ピロプラズマ病放牧牛のダニ対策で発生予防

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対象家畜

特徴

小型ピロプラズマ病

小型ピロプラズマ病はタイレリア・オリエンタリス(旧名タイレリア・セルゲンティ)の感染を原因とする牛の原虫病である。過去には各地の放牧場で大発生が問題となっていたが、現在も対策を取っていない放牧場で発生がみられる。

この原虫は主にフタトゲチマダニの体内で増殖し、吸血を介して他の牛へ感染する。

本病の主な症状は発熱、貧血、発育停滞である。死廃率は1%未満と高くはない。重症例では貧血が進行して可視粘膜は蒼白となり、食欲が廃絶する。起立不能から死亡するものもある。

対策

媒介ダニの駆除による感染予防と、放牧馴致および早期発見・治療による発病予防がある。

フタトゲチマダニは、幼ダニ、若ダニ、成ダニの各発育期に寄生する動物を替える3宿主性のダニであり、完全に撲滅することは困難である。牛に効果のある殺ダニ剤を定期的に投与し、放牧地のダニ生息密度を低く保つことが重要である。

本病に対するワクチンはない。治療は抗原虫薬の投与と、補液や二次感染対策を中心とした対症療法を実施する。発病牛は安静を保ち、良質な飼料の給与を行う。

[写真:赤血球内のタイレリア・オリエンタリス(赤紫色の小点)(上)、牧草の上で牛が来るのを待つフタトゲチマダニの成ダニ(下)]

動物衛生研究部門 : 小林創太

参考情報


情報公開日 : 2016年1月13日
情報更新日 : 2021年3月15日