動物衛生研究部門

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卵巣嚢腫早期発見・早期治療がカギ

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対象家畜牛、めん羊、山羊、豚

特徴

卵巣嚢腫

卵巣嚢腫とは、卵胞が排卵することなく異常に大きくなる状態を言い(写真上)、卵胞壁の黄体化の有無により卵胞嚢腫と黄体嚢腫に分けられる。排卵が起こらない原因として、排卵を誘起する黄体形成ホルモン(LH)の一過性大量放出(サージ)の欠如や減弱が考えられている。

牛に多発し、豚・めん羊・山羊にも発生する。生殖器病に占める卵巣嚢腫の割合は乳用牛で約15%、肉用牛で約13%と高く、不妊の原因となって空胎期間を延長させることから畜産経営に多大な被害を及ぼす疾病の一つとされる。

牛では持続性や頻発性の発情を示す個体、無発情のものやそれらの中間型を示すものが知られているが、無発情が多いとされる。経過が長いものでは、陰唇の腫大や尾根部の隆起(いわゆる尾高。写真下)など特徴的な外観を呈する。

対策

発症要因には遺伝的素因や高泌乳、加齢、季節の影響、ストレスなどが考えられているが、一般に濃厚飼料が多給される牛群での発症率が高く、エストロジェン様物質を多く含むマメ科牧草(アルファルファやアカクローバなど)の過給によっても発症することから、給与飼料の確認が重要となる。

卵胞嚢腫の治療には排卵誘起による黄体形成や黄体化の促進を目的として性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)やヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)の投与が行われるとともに、外因性の黄体期を作出するために腟内留置型徐放性プロジェステロン製剤が使用される。黄体嚢腫の治療には黄体化の促進を目的としてGnRHやhCGの投与、黄体を退行させるプロスタグランジンF2αの投与などが行われる。早期に発見され、早期に治療されるほど予後は良好とされる。

[写真:卵胞嚢腫牛の卵巣(直径約3.5cmの2個の嚢腫卵胞が認められる)(上)、卵胞嚢腫牛(慢性化により尾根部の隆起が認められる)(下)]

動物衛生研究部門 : 檜垣彰吾

参考情報


情報公開日 : 2017年11月8日