動物衛生研究部門

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悪性カタル熱野生動物や羊などの自然宿主との接触に注意

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対象家畜牛、水牛、鹿、めん羊

特徴

悪性カタル熱

悪性カタル熱は、マカウイルス属に分類される複数のウイルスが原因となり、ウシ亜科およびシカ科の動物に重篤な全身症状を引き起こす届出伝染病である。ウシカモシカ(ヌー)を自然宿主としウシカモシカヘルペスウイルス-1が原因となる「野生動物由来型」と、羊を自然宿主としヒツジヘルペスウイルス-2が原因となる「羊随伴型」の2つのタイプが存在する。野生動物由来型はヌーの生息域であるアフリカならびに動物園でも発生が認められることがある。一方、羊随伴型は日本を含めた世界各地で発生が認められる。海外ではごくまれに豚での発生も報告されており、日本国内でも豚での羊随伴型悪性カタル熱の発生が1例報告されている。

本病は自然宿主(ヌーや羊)では症状を示さないが、牛や鹿などでは、甚急性の場合は急死するケースもある。多くの症例では突然の発熱や角結膜炎、鼻鏡、口腔や陰部粘膜のびらん・潰瘍、リンパ節の腫脹や神経症状などを示し、数日から数週間で死亡する。

対策

本病には有効な治療法が存在しない。野生動物由来型はヌーの目や鼻の分泌物、出生直後の幼獣に含まれるウイルスが感染源となる。羊随伴型も感受性動物と羊の接触が感染原因となる。本病の発生は羊の周産期と関連すると考えられている。本病は羊と感受性動物(牛や鹿、まれに豚)を同じ敷地内で飼育している農家で散発的に発生が認められる。羊と感受性動物が接触できないような飼育形態をとり、ウイルス伝播を阻止することが大切である。

[写真:鼻鏡のびらん・潰瘍(群馬県家畜衛生研究所提供)]

動物衛生研究部門 : 安藤清彦、松浦裕一

参考情報


情報公開日 : 2017年9月13日
情報更新日 : 2024年11月18日